第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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れを肩に担いだ作業着を着た少年が、屋敷の前に立つ士郎たちに気付き足を止めると慌てた声を上げた。
「レイナールか? お前こそどうしてここに?」
「は? どうしてって、それは―――ッ!! ッ!? す、すいませんっ! すっ直ぐに終わらせますッ!!」
レイナールは士郎の疑問に応える言葉ではなく、唐突に謝罪の言葉を口にすると、勢い良く頭を下げその場から脱兎の如く駆け出していく。士郎はその様子に目を白黒させたが、直ぐに後ろを振り向くと、非難がましい視線を背後の人物に向けた。
「……凛、一体何をした」
「失礼ね。別に何もしてないわよ。ただあの子たちにお願いしていただけよ」
「お願い、ですか?」
馬車から下りてきたティファニアが首を傾げると、凛は小さく肩を竦めた。
「大した事じゃないわよ。ただ、屋敷を片付けといてって言っただけ」
「…………それは」
「何とも……」
「酷い話ね……」
ルイズとジェシカ、そしてキュルケが目頭を押さえながら首を振った。
どうやらレイナールだけでなく、士郎とセイバー以外の水精霊騎士隊の隊員が全員いるようだ。レイナールが駆けていく先には、土魔法で何やら土台を作っているギムリの姿があり、屋根の上には、金槌を振るうギーシュの姿がチラリと見れた。
これまでのこの領地の荒れ様から、この屋敷の状態もかなり酷いものだったことは容易に予想できる。もしかしたら、今にも崩れ落ちそうな程に酷い状態だったのかもしれない。それが、新品―――とは言わないまでも、中古物件として問題なく売れるだろうレベルにまで修復するのには、これまで相当の苦労があった事だろう。
魔法学院で学ぶ貴族の子弟が、汗水たらし平民の土作民の如く昼夜問わず働いていたのだろう。
その苦労を忍び、心の中で涙を流したルイズは、その元凶であろう女を厳しく睨みつけた。
「ちょっとあなたっ、ギーシュたちはあれでも士郎の部下なのよっ! 何であなたが勝手に使っているのよっ! って言うか、貴族を何だと思っているのよっ!」
「はぁ、うるさいわね。いいじゃない。元々はあっちが言い出した事なのよ」
「え?」
凛の言葉に、ルイズは目を丸くしてピシリと硬直した。
キュルケとジェシカは変態を見るかのような目つきで黙々と作業を続けるギーシュたちを見た。
「自分から言い出したって、あの人たち被虐趣味でも持ってるの? まあ、貴族様等は何かと特殊性癖を持っているとは聞くけど、若い身空でそれは……」
「さあ、一人は確実に持っているのは間違いないけど……もしかして調教された?」
キュルケが視線を向けると、恐れが多分に混じった眼差しを躱すように目の前で手をひらひらと振った凛は、くいっと顎で板切れを風の魔法で切断しているレイナールを示した。
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