第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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ですが、何処かわかりますか?」
「お屋敷、ですか? お屋敷はあちらでございますが……よろしければご案内差し上げましょうか?」
荒れた農道の先に指を向けた老農夫は、士郎たちに振り返ると笑みを向けた。
「よろしいのですか」
「ええ、どうせ暇ですし」
士郎の遠慮気味の言葉に、老農夫は大きく頷いてみせる。
「なら、よろしくお願いします」
「お屋敷にご用事があると言うことは、もしや新たな領主のエーミヤ・シェロウ殿では……」
頭を下げる士郎をまじまじと見つめていた老農夫は、恐る恐ると言った様子で口を開いた。
「……衛宮、士郎です」
頭痛を堪えるように眉間に手を当て俯く士郎に、手を叩き喜色を帯びた声を上げた。
「おお、やはりそうでございますか。お屋敷が改装されておりましたし、新たな領主が来るのではと皆で噂をしておりました」
「……屋敷を改装?」
老農夫の言葉に、俯いていた士郎の身体がピクリと動く。
「ええ、前々から若いお貴族様がたが屋敷に色々と手を加えて……あの、どうか致しましたか」
「……いや」
顔を上げた士郎が、直感的に隣に立つ一人の女―――凛に顔を向ける、と。
「…………」
「何で目を逸らす」
スイっと目を逸らす凛に、ジト目の士郎が責めるような口調を向ける。
「……なによ」
「あなた、何か知っているわね」
しかし逸した視線の先に立つルイズが、士郎と同じようなジト目で凛を睨みつけていた。
「はぁ……さっきも言ったでしょ―――必要経費って」
未だ疑いの目を向けてくるルイズたちの視線に背を向け馬車へと向かう凛は、後ろ手にひらひらと手を振った。
「見ればわかるわよ」
「これは……予想外だったな」
「そう、ね」
「わぁ……」
老農夫の案内で辿り着いた先で、士郎たち一行は目の前に光景に感嘆の溜め息を着いた。長い間人の手が全く入らなかったためにほぼ獣道と化した道を行き、鬱蒼とした森を抜けた先にその屋敷はあった。
士郎たちは荒れ果てた道行で、与えられた屋敷もまた、同様に荒れ果てているだろうと予想していたのだが、その予想は良い意味で裏切られた。
確かにその屋敷は今の流行から程遠い古い型であったが、それでもまるでつい先日建てられたかのような輝きが見られた。厳しい目で見れば、所々に年月による劣化も見られるが、穴が空いたり壊れた箇所はなく、あったと思われる場所は綺麗に補修がされている。
どうやらまだ工事中であるのか、今もまだ、金槌が釘を叩く音が屋敷のあちらこちらから聞こえ、目の前を作業員だろうか、板を担いだ若者が……。
「―――あれ? 隊長、もう来たんですか?」
長い板切
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