第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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他所に、士郎たち一行は無事にド・オルニエールの地へと辿り着いた。
「―――見渡す限りの荒野ね」
馬車から下りた凛が、眼前に広がる光景に何処か引きつった笑みを浮かべながら呟いた。
同じように馬から降りたルイズたちも同じような顔でド・オルニエールの土地を見渡していた。
凛の言葉の通り、士郎が下賜されたド・オルニエールの土地は、年収一万二千エキューのあがりがあるとは思えない程の荒れた土地であった。ちらほらと見える畑らしきものは、どうみても豊かとは言い難いものばかりで、それ以外は雑草が生えた荒地が広がるだけ。
「ま、まあ、重要なのは畑じゃないし……」
凛が頭を振りながら馬車に戻っていく。
「う〜……やっぱりここが一万二千エキューの土地とは思えないわよ。これって一体どういう事なの?」
ルイズが頭を抱えていると、丁度その近くに荷馬車を引いた年配の農夫が通りかかった。
「あ、ちょっとわたし、あの人に聞いてきます」
シエスタがびょんっと手を上げ、通りかかった農夫に向かって駆け出していく。
「ん? なにかなお嬢ちゃん?」
「あの、ちょっとお聞きしたいんですが、ここはド・オルニエールの土地ですよね」
「ふむ、確かにここはド・オルニエールじゃ……ですが。どうかいたしましたか?」
シエスタと話す途中で、遠くで見つめてくる士郎たちに気付いた農夫は言葉を改めた。
どうやらシエスタがどこぞの貴族一行の従者だと気付いたようだ。
貧相な老いた馬を引く農夫は、馬と同じく見るからに貧乏臭い格好の老いた老人だったが、シエスタとの会話を聞くに訛りのない綺麗な言葉であった。
「あ、えっと……その、年収一万二千エキューの土地って聞いていたんですが、それにしては随分と荒れているなと思いまして」
「ああ、そういうことですか」
老農夫は、微かに頬を上げると、昔を思い出すように目を細めた。
「先代の領主様の時代は、確かにその通りの土地でしたが。もう十年前の事です。後継がいないまま、先代がお亡くなりになられたことから、この土地はお国に召し上げられることになったのです。結果として、若い者はこの土地を離れていき、残ったのはわたしのような老人ばかり。今では年寄りが数十人ばかり細々と土地を耕し暮らしているだけでございます」
老人から聞き出した話を聞いた士郎たち一行は、全員が同時に「はぁ……」と溜め息を着いた。
シエスタの後ろをついてきた老人は、士郎たち一行を見渡すと首を傾げた。
「あの、どうか致しましたか?」
「あ〜……いや、何でもありません。そうだ、少しお聞きしたいことがあるのですが」
士郎は気遣う老農夫に小さく首を振る。
「はい、何でございますか?」
「屋敷がある筈なん
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