第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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―――肩身が狭い。
アンリエッタが下賜した領地であるド・オルニエールに向かう士郎の心境がそれであった。
ド・オルニエールの領地は、トリステニアの西へ馬で一時間程の距離にあり、それは丁度魔法学院からトリスタニアへ行く時間と同じぐらいであった。そう言った距離や移動時間の関係から、ド・オルニエールは気軽に行き来する事が出来る領地であった。
と、いうわけで、士郎たちは夏休みが終わる前にと、一度下賜された領地の検分しに出かけたのだが……。
「―――あ〜……前々から思ってたけど、もう少しまともな移動方法ってないの?」
「……へ〜何か文句でもあるって言うの。馬に乗るでもなく、ただ荷台に乗っているだけでありながら」
「ん? ま、ね。思ったよりも揺れるのね馬車って。これなら何かクッション……」
「……何故そこで俺を見る」
「あら? 言わないとわからないの?」
「ふ〜ん。この程度の揺れでクッションが必要なんて。ああ、そっか。自前のクッションが薄いせいなのね……上と同じく」
「……いい度胸ね」
「何が? ああ、羨ましいわね。あたしも自前のクッションが薄ければ、シロウにお願い出来たんだけど……」
「この小娘」
「何よお・ば・さ・ん」
「―――へぇ」
…………もう嫌だ。
ド・オルニエールの領地へと向かう士郎たち一行は総勢七名。
ルイズと士郎の主従コンビ。そしてタバサがいなくなった事から暇を持て余し気味のキュルケ。水精霊騎士隊の副長のセイバー。士郎付きのメイドとしてシエスタとジェシカの二人。そして周りが皆行くと言うことから付いて来たティファニア。
この七名が僅か一時間であるがド・オルニエールまでへの旅の一行であった。
一行の足は基本馬であったが、凛とシエスタ、そしてジェシカの三人は二頭の馬が引く馬車に乗車していた。
最早ギスギスではなくバギギギとでも言うような空間になる一行の中、士郎は現実逃避的に遠い目となる。
本来ならば、ここに水精霊騎士隊の他の隊員も全員来るはずであった。
そう、つまり男が四人加わる筈であった。
では、何故このような結果となったのか?
全ては遠坂凛が原因であった。
水精霊騎士隊の隊員と言いながら、今では実質遠坂凛の手下となっているギーシュたちは、今回も何かしら指令を受け(隊長である士郎に秘密に)行動を取っていた。
……最低でも訓練は倍だな。
顔を俯かせ、士郎が澱んだ瞳でギーシュたちのこれからの運命を決めていると、地獄の鬼さえ逃げ出す修羅場の空気の中、ため息混じりの声が上がった。
「っはぁ……ほんと仲良いわねあなたたち」
一行の先頭を進んでいたキュルケが、ジト目で振り返りながら一触即発な空気の中心であるルイズと凛、ジェシカの三人を睨んだ。
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