Side Story
無限不調和なカンタータ 3
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リディナさんでも食べられる?」
白い繊維が無数にわさっと伸びてるカリフラウもどきを、私に食えと?
「人間は、喋ったり動いたり鳴いたりするものに共感するでしょう。植物が人間にもハッキリ伝わるような言動をしてたら、動物と同等程度に罪悪感を持ったんじゃない? 抵抗しないなら何をしても良い。反抗しないんだから文句は無いだろ、ってトコかしら?
人間同士でもよくある話よね。『イジメ』とか表現されてる、あれ。
要は、相手の意思や生命の形を認めてない。見ようともしてない。
自分以外は生物とも思えないし、なんなら便利な道具にしか見えない。
認識能力が根っこから欠落してる、幼稚で無知な『自我の殺戮行為』。
あれ、やられたほうはたまに悪魔の所業とか言ってるけど一緒にしないで欲しいのよね。本物の悪魔だったら対象の意思を尊重した上で遊ぶっての。手間暇掛けて人形を壊しても楽しくないでしょうが。私は要らないわよ」
怪しげな物を選別したら、ほとんどが毒性植物だった。
どうして、この瞬間に生きていられるんだ、こいつ。
「え、じゃあ食事はどうするの? でも、グリディナさんも初対面で突然、僕を殺そうとしてたよね。意思を認めるどころか、会話も無かったのに」
「気が向いた時に少し喰えば、しばらくの間は何も必要ないの。一応、火は通しておきなさいよ? それは、あんたのため息が物凄くウザかったから。この世界のため息全部、消滅すれば良いのに」
「うん。野生の植物は、果物以外そのまま食べるなって言われてるし、加熱処理はするよ。グリディナさんの前では、ため息も禁止なのか」
「物分かりが良くて嬉しいわ」
昨日集めた枯れ枝に着火。
採りたての植物を焼き始めるカールに優しく、にーっこりと微笑む。
枝に刺した植物を見つめる顔が妙に赤いのは、たき火のせいかしら?
朝食を済ませて、伐採を再開。
必要数を揃えた所で昼食にして、それから延々と裁断。
全部の作業を一人でやると張り切ってはいたけど。
予想通り、今夜も寝場所は木の上になりそうね。
「むふぎゅ!」
はい、合計百八十九回目の転倒ー。
「丸太切りしてる最中で前面にすっ転ぶ人間なんて、そうそういないわよ。力の入れ方がおかしいんじゃないの?」
それでいて、伐採道具で顔ざっくりは避けてるんだから。
不器用が二周半して、実は器用なんじゃなかろうか。
「自分では、教えてもらった通りにしてると思うんだけど。できてないから転ぶんだよね。あはは……情けないなあ」
体中に付いた木屑を払うカールの顔は、笑ってるのに笑ってない。
ふぅん? ちょっとずつだけど、思考が現実に傾いてきてるわね。
でも、自己認識で折れて逆戻りはいただけないわ。
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