Side Story
無限不調和なカンタータ 3
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苦しいけど、頭ははっきりしてる。いつもはもっとぼやぁってしてるのに……グリディナさんの歌のおかげ?」
「そうよ。人間の頭の奥に一定の振動……この場合は「波」と表現するのが適切ね。それを与えると、緩やかに覚醒させられるの。逆に、眠らせることもできるわよ」
「すごい……楽師にもできないよ、そんな事」
そりゃそうでしょうね。私は音特性の悪魔だから呼吸同然に扱えるけど、其処いらの人間じゃ波を操るのは絶対無理。
「あんたはその気になれば使えるわ」
昨日の時点で既に使ってるし。
「え? 無理だよ。僕の歌、グリディナさんほど綺麗じゃないもん」
……これよ。
この自信の無さが、滅茶苦茶腹立たしい!
てか、波に必要なのは『正確な波長の把握と適切な発声』であって、歌そのものが綺麗に聴こえるかどうかは関係しないっての。
ああもう、無自覚男め!
その背中、踏ん付けてやろうかッ!
「それより、グリディナさんて本当は有名な楽師なの?」
……は?
「悪魔が人間の職に就くとでも?」
「でも今の、結婚式の祝福歌だよね。王族や貴族みたいな限られた偉い人に贈られる物で、各神殿の関係者以外は殆ど知らない歌」
「あら、そう。私は偶然聴こえた歌を覚えただけよ。意味なんて知らなかったわ。起こすにはぴったりな言葉並びなのに……残念。あんた、結婚とは無縁そう」
「婚約者なら村に居るよ」
なぬ!?
こ、こんな将来性が全く見えない男に嫁ごうとする女が居るなんて!
「不憫……。」
「本気で哀れまないでくれますか。居るって言っても六年間会ってないし、多分他の人と結婚してるから……確かに今は無縁かな。でも、無理に相手を作るよりずっと良いよ。僕なんかを押し付けるのは女性に申し訳ない」
……イラッ。
「「僕なんか」は全面禁止!」
「ふぇ!?」
「自信が無いのはともかく、表に出すのは止めなさい! 卑下したって莫迦共に付け込まれるだけ。慰めてくれる相手は何処にも存在しない。聞いてて心底ムカつくのよ!」
「そう言われても……」
あー、うだうだと煩い雑音。気分の良さが吹き飛ぶじゃないの!
「あんた、私の歌をどう思った?」
「え? ……綺麗だなって」
「なら、綺麗に歌える私が保証してあげる。あんたは並の人間には敵わない、とんでもなく良質な音で歌ってるわ。それを「なんか」呼ばわりするのは、保証した私の感性に対する冒涜に等しい。あんたが卑下する度、私に喧嘩を売ってるって事よ。此処まで噛み砕かなきゃ解らない?」
「!」
「あんたがどう思おうと知ったこっちゃないの。私が認めたものを貶めて莫迦にしないで頂戴。理解したら返事!」
「はひっ」
「そして実行!」
「ど、努力しますっ」
「煮え切らないわねぇ
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