Side Story
無限不調和なカンタータ 3
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
もぞ……と動いたカールが、私の歌に続きを重ねた。
さすが、腐っても元楽師希望者。
寝起きで腹を圧迫した状態でも、発声は余裕か。
「おはよう、カール。寝覚めは快適かしら?」
「うん。ちょっと息苦しいけど、頭はすっきり冴えてるよ。いつもはもっとぼやぁってしてるのに。これって、グリディナさんの歌のおかげ?」
「そうよ。人間の頭の奥に一定の振動……この場合は『波』と表現するのが適切ね。それを与えると、対象の意識を緩やかな速さで覚醒させられるの。逆に眠らせることもできるわよ」
「すごい。熟達した楽師にもできないよ、そんなこと」
そりゃそうでしょうね。
私は『音』特性の悪魔だから、呼吸同然に扱えるけど。
そこいらの人間程度じゃ、『波』を意図して操るなんて、絶対に無理。
「あんたなら、その気になれば使えるわ」
昨日の時点で既に使ってるし。
「え? 無理だよ。僕の歌、グリディナさんほど綺麗じゃないもん」
……これよ。
この自信の無さが、滅茶苦茶腹立たしい!
てか、『波』に必要なのは『正確な波長の把握と適切な発声』であって、歌そのものが綺麗に聴こえるかどうかは関係しないっての!
ああもう、無自覚男め!
その背中、踏んづけてやろうか!!
「それより、グリディナさんて本当は有名な楽師なの?」
は?
「悪魔が人間の職に就くとでも?」
「でも、今の歌って結婚式用の祝福の歌だよね? 王族とか貴族みたいな、限られた偉い人に贈られる祝詞で、各神殿の関係者以外には秘匿された歌」
「あら、そうなの? 私は偶然聴こえてきた歌をなんとなく覚えただけよ。意味なんて知らなかったわ。起こすにはぴったりな言葉並びなのに、残念。あんた、結婚とは無縁そう」
「婚約者なら、村に居るよ」
なぬ!?
こんな、将来性がまったく見えない男に嫁ごうとする女がいるなんて!
「不憫……」
「本気で哀れまないでくれますか。居るって言っても六年は会ってないし、多分とっくに他の人と結婚してるだろうから……。確かに、今は無縁かな。でも、無理に相手を作るよりはずっと良いよ。僕なんかを押し付けるのは、女性に申し訳ないもん」
イラッ。
「『僕なんか』は、全面禁止!」
「ふぇ!?」
「自信が無いのは仕方ないとしても、態度に出すのは今すぐやめなさい! 卑下したって、バカ共に付け込まれるだけ! 慰めてくれる相手はどこにも存在しない! そういうの、聞いてて心底ムカつくのよ!」
「そう言われても」
あー、うだうだとうるさい雑音。
気分の良さが吹き飛ぶじゃないの!
「あんた、私の歌をどう思った?」
「え? 綺麗だなーって」
「なら、綺麗に歌えるこの私が保証してあげる。あんたはそんじ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ