Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 28. Duel in the Three Quarters
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ご利用ありがとうございました!!」
自衛のためか、営業モード全開らしいリズの直角のお辞儀を受けながら、俺はリーナの手を引っ掴んで店の外へと出る。一応大人しくはなったが、まだ面が不機嫌なままだ。
夏に入る少し前からか、リーナの感情がこんな風にちょっとしたことでも表情に現れるようになってきた。喜怒哀楽を仄かに含んだって程度だが、基本無表情なコイツにとっては多分大きな変化だろう。
あと、さっきのコロシアムの時みたいに、俺の考えや嗜好、行動を予知レベルで把握してくるようになった。買いに行こうとしてた調味料がいつの間にか買い足されてたり、なんか疲れたから少し休憩でもって考えた直後にはハーブティー淹れてきて「休む?」と訊いてくる。
最初こそ「ついにガチでエスパーになりやがったのかコイツ」とびっくりしたが、思考を読まれるのはぶっちゃけ慣れきってたから、すぐにどうでもよくなった。とはいえ、改めて考えてみるとやっぱコイツすげえわ、とは思う。
俺と同じ時期に新調した薄いベージュのケープを纏う相方を後ろ目に見て、心の中で感心――ああ、そういやリーナの手首をがっちり掴みっぱなしだった。
「……ぁっ」
パッと放してやると、リーナは可聴域ギリギリのごく小さな声をもらした。
「なんだよ」
「ん。別に、なにも」
俺の問いかけに、リーナは小さく頭を振って答えた。ととっ、と小走りで俺の横に並び、元の無表情をこっちに向けてくる。
「さっき、リズと何か揉めてたの?」
「あ? いや、別に。ちょっとキリトのことでからかっただけだ」
「……それだけ?」
隠しても無駄、とでも言いたげな目でリーナは俺を見てくる。だから、なんも隠してねえっつの。
「ああ、そんだけだ」
「……ん、分かった」
お詫びに、とリーナは袋からホットドッグを二つ取り出し、一方を俺に渡してきた。濃い味付けのそれをかじりながら、転移門の広場を目指して商店街を進んでいく。
「さっき、ディアベルからメッセージが来てた。決勝トーナメントで来賓席確保しといたから、必ず来いってよ」
「ご飯は?」
「祝勝パーティーやるとさ。ケイタが勝ち上がるように祈っとけ」
「ん、分かった。じゃあ、今から行って三時間稽古付けてくる」
「……いいけどよ、やり過ぎんなよな」
「冗談。今の彼なら心配ない、必ず勝てる」
「ま、あんだけ訓練すりゃ、イヤでも上達すんだろ」
「うん……だから今日はずっと、一護といることにする」
そう言うとリーナは翡翠の瞳で俺を見上げ、淡く、けれどはっきりと微笑む。
「今日はって、ここ二年弱の九割がたはオメーと一緒にいただろ。しかも一日中」
「……確かに、おはようからおやすみまで全部一緒……いや、お風呂だけは絶対に
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