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い」
なんとも先の読めない早霜の様子に、提督は頭をかいて自分が座るソファーの反対側、テーブルを挟んでもう一つ置かれているソファーを指差した。
「はい、こっち」
「えぇ、そうね。ソファーに座るほうがいいのね……」
早霜は立ち上がり、またスカートの裾を一つ払ってソファーに座った。
提督の隣に。
「いや、いやいや早霜さん、僕が指定したのは」
「?」
飼い主の顔を見上げる子猫のように、早霜は小首をかしげ提督を見つめ、提督はその視線から逃げるように顔を俯かせ肩を落とした。
「どうしたの司令官……大丈夫よ、私がついているわ……」
「憑いているに聞こえるんですがそれは」
「……ふふふふふ、ふふふふふふふ」
提督の返しが気に入ったのか、早霜は笑い始めた。ただその笑い方は……控えめに言っても心臓に良くない笑い方であった。多分暁や潮やグワット辺りが見たら一人で眠れなくなるレベルだ。
「……で、君はなんの用事でここに?」
「……」
提督の言葉に早霜は何も応えず、浮かべていた笑みも消して静かに提督の目を見て在るだけだ。引き込まれる、飲み込まれる、引きずり込まれる。そう感じた提督は身じろぎし、
「……っ」
何か硬い物が自身の尻の下にある事に気付いた。僅かに腰を上げ提督は下にあった物を取り出して、あぁ、と呻いた。先ほどまで提督の下にあり、今は提督の手に在るのは彼がソファーに投げ捨てた軍服の上着だ。
「ありゃまぁー……」
早霜の事も一時的に頭の隅に置いて、提督は白い上着を両手で持って広げる。目の前にあるその服に、少しばかりの違和感を覚えて首を傾げると、提督の頭の隅に追いやられていた早霜が声を上げた。
「司令官……これではなくて……?」
早霜の手に在る金色のボタンを見て、提督は自身が目の前で広げる上着に視線を戻した。確かに、そこにあるべき筈のボタンが一つ足りていない。提督は、ありがとう、と応えると早霜の手に在るボタンへと手を伸ばし――空振りした。
互いに何も言わず見詰め合う。提督は目を瞬かせ、いったいなんだ、と口にするより先に、早霜が提督に手を差し出した。
「え、えーっと?」
「貸してください……」
「……えーっと?」
「ボタン、直しますから……」
早霜の言葉に、提督はもう一度目を瞬かた。早霜はその間にも、ボタンをテーブルの上に置き、あいた手でスカートのポケットから小さな裁縫セットを取り出していた。
「直しますよ……司令官」
再度、提督の耳を打った早霜の声に、提督は手に在る上着を早霜に渡した。
「あの、髪縫い付けたりとか、真っ赤な糸で、呪、とか縫わないよね?」
「……しましょうか?」
「やめてくださいし
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