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「……ふむ」
工廠へと続く道を歩きながら、加賀は手に在る書類を見つめた。
彩雲、流星、烈風狙いの開発要請書類だ。加賀は工廠に居る妖精に書類を渡しに行く最中である。妖精が行う開発は不可思議な物で、まず開発を行う際誰が妖精のサポートをするかで建造される物が違ってくる。
駆逐艦娘がやれば彼女達用の小型主砲や、対潜水艦用のソナーや機雷が建造される。戦艦娘がやれば大砲等が出来上がり、そして今回提督が求めた戦闘機は加賀達空母系艦娘達が必要になってくるのだ。だからこそ、提督が次に開発する物を理解していた初霜は、空母の加賀に秘書艦を譲ったのである。
――まぁ、あの子は固執はあっては拘ってはいないものね。
加賀は初霜の面立ちを脳裏に描き、手に在る書類を軽く弾いた。工廠はまだ少しばかり遠く、加賀は少しばかり思考の波に身を任せることにした。
――本当に出てこない。
加賀は少しばかり肩を落として息を吐いた。当然、提督の事である。着任してから半月、そろそろ一ヶ月だ。若い男が執務室に篭ってまったく、本当に一歩も、外に出ないのである。自身が着任した鎮守府であるのだから、普通は飽きるまで、人によっては隅の隅まで見回したくなる筈だ。そこが、自分の城となるのだから。
だというのに、加賀の提督は一切出てこない。いつの間にか着任し、待機していたどの艦娘にも顔を見せず、姿も現さず、影さえ踏ませず、気がつけば居たのだ。執務室に。
加賀達の提督は。
――なに、あの人は忍者か何かなの?
意外にお茶目な事を胸中で呟き、加賀は少しばかり視線を動かした。小さく開かれた場所に椅子が備え付けられており、そこに執務室の窓から見た扶桑と、メモとペンを手に、ふんふん、といった感じで頷く青葉の姿があった。
その青葉は、加賀に気づいた。彼女は加賀に一礼し、隣の扶桑にも一礼すると椅子から立ち上がりどこかへと去っていく。残された扶桑も立ち上がり……何を思ったのか。彼女は加賀へと近づいていった。
「加賀、おはよう」
「えぇ、おはよう」
提督曰くの癒し枠の近所の優しいお姉さん的存在、扶桑の挨拶に、加賀は少しばかり俯いて返す。何せその提督の幻想を粉微塵に砕いたのは加賀である。扶桑自身の行動に問題があったとしても、告げたのは加賀だ。気まずいのは、仕方のない事であった。
その気まずい思いを消すためか、加賀は二度ほど咳払いをして扶桑に確りと目を向けた。
常に冷然とした加賀のそんな姿に、扶桑は違和感を覚えたが、彼女の手に在る書類を見て艶麗な微笑を浮かべた。
「おめでとう、加賀。提督のお仕事を手伝っているのね」
「ええ……ありがとう。あの人は、まだ出てこないものだから」
「ふふ……じゃあ、邪魔をしても悪いから、またね
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