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相がどこか苦しそうな気配を含んでいる事に気づいた提督は、慌てて身を起こし目を見開いた。
「え、ちょ、加賀さん? なにその反応? え、違うの? 実は優しい近所のお姉さん枠じゃないの扶桑さん?」
「少し前の話なのだけれど――……いえ、やっぱりやめましょう」
「すっごい気になるんですがそれは」
その提督の言葉が、加賀の背を押してしまったのだろう。加賀は遠くを見る目で執務室の壁を見つめながら、話し始めた。
「この前、廊下で初霜と扶桑がすれ違ったのを遠くから見たのだけれど……扶桑、初霜に向かって手を合わせていたわ……」
「Holy shit!」
金剛が居たらびびるくらい流暢なイントネーションで提督が叫んだ。態々流暢なイントネーションで叫ぶような事では無かったが。
「あと、初霜と雪風と時雨が扶桑とすれ違ったのを遠くから見た時は……扶桑、彼女達に向かって膝をついて賛美歌を歌いだしていたわ……」
提督は無言で数度机を叩き、それが終えると暫くただ静かに肩を震わせていた。
ちなみに、扶桑に突如賛美歌を捧げられた彼女達の反応だが、時雨はハイライトの消えた瞳で扶桑をじっと見つめ、雪風は初霜の背に隠れて泣き出しつつ確りと魚雷を装填し、初霜は周囲を見回し退路を確保しようとしていた。
偶然その場を通った山城が、扶桑を引きずって去らなかったらどうなっていたのか、それは歴史のIFである。
提督は天井を仰ぎ見、ため息と共に言葉をつむいだ。
「仕事に戻ろう」
「そうね」
提督は机の上にある書類に向き直り、加賀は提督に覆いかぶさり再び頭に豊かな双丘を乗せた。提督は数秒ほど固まり、また机に伏せて暖かく柔らかいそれから逃げる。疲れた顔で目を閉じ、提督は声を上げた。
「加賀さん……?」
「冗談よ」
加賀は小さく呟いて、微笑んだ。
「半分くらいは」
加賀の笑みは、当然提督には見えなかった。
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