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浜風は、その豊かな胸を撫で下ろし、ほっ、と一息ついた。
右手にある、今は演習用の模擬弾が詰められている連装砲を一瞥してから、浜風は自身の周囲を見回した。右足のつま先で地面を、とんとん、と叩く時雨。陸に上がってもまだ物足りなさげに海を眺める夕立。潮風に流される髪をおさえながら空を眺める綾波。肩から力を抜いて、ほう、っと立つ高波。眠そうな顔で棒立ちの初雪。
浜風は連装砲を軽くたたいて、
――今日も勝ちましたよ、提督。
微笑んだ。
通常、演習という模擬戦は違う提督につく艦娘同士で行われる。その組み合わせは大本営が用意し、その中から希望に沿った演習相手を選び、あとは提督同士で話をする。自分はこの編成でいきますが、どうでしょう? あぁ、でしたらこちらはこれで行きますが、大丈夫ですか? そういった具合だ。
この大本営が用意する演習相手は、その提督と同期が7割、ベテランが3割ほどだ。同期には自身の状態は相手と比べてどうであるかという判断基準にさせ、ベテラン相手には実戦に近い形で揉んで貰え、という事である。
これでさまざまな事を学ぶ提督は多い。可能性の模索や先人の知識を垣間見る機会となるからだ。
ただ、それは通常の鎮守府の話だ。
「んー……っ! 今日の演習、なかなかでしたねー」
「っぽい!」
「まぁ、うちの鎮守府だからね」
歩きながら右腕を突き上げ背を伸ばす綾波に、夕立が笑顔で頷く。そんな二人のすぐ後ろを歩く時雨が、空を見上げて笑う。
彼女達の今日の演習相手は、重巡洋艦娘2人、軽巡洋艦娘2人、同じ駆逐艦娘が2人であった。駆逐艦6人の演習相手としては、相当重い相手である。
しかし、彼女達はその演習で白星をとった。勝利の理由は実に単純明快だ。
「彼女達も、経験を積んで錬度をあげれば、化けますよ」
「かもですね。艦種が違うし、多分次から危ないかもです」
浜風の言葉に、高波が何度も頷いて返す。
今回、この鎮守府の提督に演習を申し込んできたのは、提督歴一ヶ月になる同期の提督であった。当然、そこに集った戦力はまだまだ乏しく、配属している艦娘達も未成熟だ。対して綾波、時雨、夕立、初雪、高波、浜風が所属するこの鎮守府の戦力は――充実していた。最前線海域を任されたベテラン提督となんら遜色無いほどに、充実していたのだ。
ゆえに、演習での編成を組む際、長門は駆逐艦娘6人を選んだのだ。侮りではない。決してながもんの趣味じゃないと拳を突き上げて。
『見せてやるんだ。教えてやるんだ。駆逐艦であっても長い時間で積み上げた努力と経験は、時として艦種をも超えるのだと』
錬度の違いが、この編成を良しとした。六対六の海上演習は段違いの経験と錬度差が、艦種の差を飛び越えて如実に現れた。まし
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