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執務室の新人提督
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 ぺらり、と視界いっぱいに広げていた紙面――新聞をめくり、提督は次の頁に目を通した。
 提督は執務机にひじをつき、広げた新聞を眺めながら一人頷きつつお茶をすすっている。そしてそんな休日のお父さん的姿で寛ぐ提督の向こうでは、白いエプロンと髪をポニーに結った初霜がソファ−に座って提督の衣服等を畳んでいた。
 
『新人提督氏、念願の雪風』

 そんな記事に一人頷いて、提督は自身の遠い記憶を思い出していた。提督となった皆が通る道である。出ない五航戦姉妹、二航戦の黄色い方、卵焼き製造機。
 
 提督はなんとなく胃の辺りをおさえて記事の続きを読んでいく。どうやら、記事になるだけあって異例の事態らしく『着任一ヶ月の快挙、天佑なる哉』と大きく書かれている。

「あぁ、この人同期なのかー」

 小さく呟いてから、胸中で同期であるらしい新人提督に応援を送った。
 
 ――さぁ、次は島風だ。
 
 そしてその後も五航戦姉妹、二航戦の黄色い方、卵焼き製造機、タウイタウイ、グワット、ホテルに御殿にと、地獄は続いていく訳である。もっとも、一番地獄の苦しみを味わうのは潜水艦娘達であるが。
 それにしても、と提督は新聞を畳み、初霜へと視線を動かした。

「この共同青葉通信っていうのは、案外悪くないねぇ」
「各地の青葉さんの合作ですからね。私達の間でも、購読者は増えているみたいですよ」
「なるほどなー」

 机の上に置いた新聞、青葉通信の一面に目を落として、提督は感心感心と小さく手を叩く。趣味ごとに重きをおく艦娘は数あれど、ここまで突き抜けた艦娘はそうは居まい、という感心だ。この青葉、という重巡洋艦娘は、前述された雪風、島風などと比較すれば建造しやすく、海域で発見もしやすい。早めに提督の下に配属された彼女は、その生来の気質か、従軍したとある人物の影響か、兎に角"取材"とそれらで得た情報の公開に酷く熱心なのだ。もちろん、常識の範疇で許された情報の公開である。軍属である青葉は、いうまでも無くその辺りは規律的であった。まぁ、同艦であっても個体差はある訳だが……。
 
 そしていつしか彼女達は、自身の範疇にある情報だけでは満足できなくなったのである。一人の古参の青葉が、また古参である他の青葉にそれを漏らし、また他の青葉は他の青葉からそれを聞き、と続けているうちに、一つの集いが生まれた。特別情報公開班、通称青葉会である。彼女達はそれぞれ所属する鎮守府、警備府、基地、泊地の名を書いた腕章をつけて参加し、互いの情報を交換して吟味し、それぞれの所属する上に確認を取って刷って行く。
 三ヶ月に一度の集いが、今一番楽しいと笑顔でこぼす青葉は多く、青葉を嫁艦とした提督など屈託の無い無垢な笑みに惚れ直した、と言ったほどであるらしい。
 
 ――情報の交換、なぁー
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