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たのだと理解した大井は、提督に礼がしたかった。
大井は思う。北上に依存していたあの頃を終わらせたのは、間違いなく提督だ。あのままあり続けていれば、自分は狂愛的な人格を作り上げ自壊して居ただろう。第一艦隊の仲間達を与えてくれたのは、提督だ。あの狂った光沢で自分を刺していたナイフを砕いたのも、提督だ。と。
されど大井には分からなかった。艦娘としての大井の容は造れたが、少女としての大井を大井自身が分かっていなかった。
大破、中破で帰還した際、提督に毒を吐いていたのは大井自身の意思だ。そこに嘘は無い。
無いからこそ、わからない。どうすれば、どうやれば、提督へ確りと自分の想いを告げられるのか。それは、今も変わらない。
――手探り中、だけど。
大井は鼻で笑った。自身に向かって、である。
どれだけ臆病なのよ。もうあれからどれくらい時間流れてると思っているんだ私。しかも今妹まで重雷装巡洋艦娘になってるじゃない。別に提督の事とかどうで良いし、良くないし、最近提督インスタントラーメン買ったって本当? 駄目ですよそんなのばかり食べてたら体壊しますよ? 今度一緒に北上さんとお弁当つくって持って行きますからね。だってたった二人だけの重雷装巡洋艦ですものあと近頃第一艦隊に編入されないから開幕魚雷そのへんの改長良型の阿武隈型軽巡洋艦娘阿武隈とかいう? なんかそんな人? にぶちこんでもいいですか? あとそろそろ阿武隈さんうざい。あとあとそろそろ138枚目の提督の写真が欲しいのでまた撮りにいきますよ。
以上、大井が自身を鼻で笑った際、頭にあった言葉全部である。
阿武隈に関しては、大井達の出番を少々奪った事に対してのライバル意識である。あと北上との距離に少々思う事があるらしい。
大井は明かり一つ無い廊下を歩み続け。そっと足を止めた。
大井が夜歩いた、その理由が、今大井の目の前にある。彼女は目の前のそれ――扉のドアノブをつかんで、回した。小さな音が廊下に響き、大井は周囲を見回す。誰も居ない事を確かめてから、彼女はそっと室内に入った。
「誰も危害を加えないからって、無用心じゃないですか……」
と口にする大井だが、もし鍵をつけられたら一番困るのは彼女である。
「ねぇ、提督」
大井がじっと見つめるその先には、彼女達に司令、或いは提督と呼ばれる男が布団に包まって眠っていた。大井はその姿を眺めてから、執務室の冷蔵庫に近づいていく。冷蔵庫をあけ、膝を床につき袋の中から羊羹、お茶などの取り出すとそれを冷蔵庫におさめていく。
「んー……この前に買って来た羊羹、あんまり口にされてませんよね。お口にあわなかったのかしら。次からは別のにしますね?」
大井は眠っている提督に笑みを向け、冷蔵庫のふた
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