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「ふむ」
小さく呟いて、その女性はテーブルにあったコップに手を伸ばした。中身を少しばかり飲み込んでからゆっくりと立ち上がり、
「これはなかなかに当たりでしたね」
そう言ってDVDプレイヤーからディスクを取り出し、ケースに直した。女性――青葉は座っていたソファーに戻り、テーブルを挟んで自身の反対側のソファーに座る、シャツとジーパンをラフな感じに着た私服姿の同僚、那智に微笑みかけた。
「うむ、悪くなかったな。特にあれだ、活躍こそ少なかったが、重量級のあのロボットは良かったと思うぞ」
「私はやはり、純粋に主人公ロボットですかね。吹き替え版のロケットパンチも、なかなかインパクトがありましたし」
言いながら、青葉は手にあったケースをソファーから立ち上がる事も無く棚に戻した。その姿に、那智は少しだけ眉をひそめ、
「青葉、駆逐艦娘達が真似をしたらどうする?」
「ここには居ませんよ?」
にんまりと笑って返す青葉に、那智は肩を落とした。
今二人が居るのは、重巡洋艦娘寮の娯楽室だ。周囲には、先ほどまで青葉達が使っていたテレビとDVDプレイヤー、さまざまなDVDが並べられた棚と、それ以外にも、ゲーム機やボードゲーム等がきっちりと片付けられて保管されているのが分かる。
二人はそんな室内で、再び今見た映像の感想をこぼし合い、良し悪しを語った。
「しかし、なんだな」
十分に語った、という満足げな顔に苦笑の色を僅かに添えて、那智はテーブルに置いてあった自分の湯飲みを口元まで運ぶ。
「先ほどのは、提督のお勧め、だったな?」
「はい、私が直接取材しましたので」
どこからともなく、さっとメモとボールペンを取り出し、青葉は、にしし、と笑った。
「あの人は、なんというか、分かりやすいな」
「まぁ、いつもの傾向はありましたね」
二人はさまざまなケースがおさめられた棚を同時に見つめる。そこにあるのは、誰誰推薦、これはお勧め、眠たい時用、注意地雷処理班専用、等と区別されたケース達である。そして棚の一番上段には、燦然と輝く『提督お勧め』の文字である。
そこに並べられているタイトルを目にしながら、那智は湯飲みをテーブルに戻し弱く頭を振った。
「あの人は、アクション、ミステリー、ホラーにカントリーと、なんでもありな癖に、ラブロマンスだけは絶対入れてこないな」
「らしいとも、言えますけどもね」
彼女達が提督と呼ぶ男のお勧めは、ジャンルこそバラバラであるが那智が口にした通りの特徴がある。どうにも彼が名を上げた作品は、恋愛傾向が薄い。もしくは、無い。あっても精々わき道にそれる程度で、メインは別、と言った物ばかりだ。
ゆえに、彼のお勧めは大抵の艦娘達に不評である。
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