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った相で拳を握り締め脳内の作業実行者達を咎めた。当然、咎めた程度の軽い物で、それは痛罵の如き激越では無かった。
「とは言いますがー」
「なんだ?」
ペンのノック部分で、今度は自身の額をとんとんと叩きながら、青葉は那智をにんまりと流し見た。良からぬ顔であるが、那智からすれば見慣れた同僚の顔芸程度だ。那智は湯飲みを手にして適量を口に含み
「提督に命令されて、拒めます?」
青葉の小さな呟きに、那智はすべての動きを止めた。息をすることも、もしかしたら彼女の心臓さえ動く事をやめていたかもしれない。
やがて、ゆっくりと湯飲みをテーブルに置き、那智は目を閉じて口の中にあったお茶を静かに嚥下した。そして、ゆっくりと、本当にゆっくりと首を横に振った。
「誰も責められないな……私は、駄目だ」
脳内で試したのだろう。自身が命令された場合の仮定を。ちなみに彼女は命令された直後尻尾を振って作業に入った訳だが、仕方が無い事である。妹が狼であるし、彼女もイヌ科に属するのかもしれない。
「大丈夫です、私もです。たぶん、命令されたら無理でしょう。何せ、ほら」
青葉は静然と微笑み、続けた。
「私達は、艦娘ですから」
青葉の静かな笑みを見てから、那智は腕を組んで鼻から荒い息を吐いた。ソファーの背に体重を預け、自身の中で渦巻く熱をどうにか処理し、今度は口から強く息を吐いた。
「お前は、楽しそうでいいな」
「記者ごっこ、なんてのも楽しい物ですよ。最近他の鎮守府の私ともスカイプとかで話をするんですが、知ってます?」
「ん?」
またも胡乱げな表情で笑い出した青葉の顔を半眼で睥睨しつつ、那智は律儀に促してしまった。この辺りは性格ゆえだろう。
「提督とほぼ同期のそこの提督さん、通算の建造回数18回目で雪風さん出したそうですよ」
「いきなりだな……いや、まぁその回数で雪風を出したとなれば、たいした物だが」
「ですねー……ちなみに、我らが提督は通算126回目ですね」
「特に運が良いという提督ではないからな、うちの人は」
那智に青葉は確かに、と頷き、メモ帳をぺらりとめくり、にししと笑った。
「大鳳さんは大型一回目で出してますけど」
「偏りすぎなんだ、あの人は」
ちなみにここの提督、大和とビスマルクも狙い撃ちで一発建造である。誰かの運を吸い取ったとしか思えない奇跡である。
「で、青葉」
「はいはい」
軽妙に返事をする青葉を、那智はやはり半眼のまま見据え、
「何が言いたいんだ?」
常から硬質な声を、更に硬くして。那智は青葉を睨んだ。
「……半月前に着任した提督は出てこない」
「あの人の気質の話だ。仕方が無い」
「初霜さんが初期からの秘書艦
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