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艦娘、とは言えど乙女である。恋に恋する駆逐艦娘達を筆頭に、淡い恋の世界を垣間見たい乙女達の思考からすれば、提督のお勧めは合わないのも道理であった。
ただし、彼お勧めの一つである、中年サラリーマンが料理を食べるだけのドラマシリーズが一部艦娘達からは大好評であったりと、まったく需要が無いという訳でもない。むしろ恋愛方面が絡まなければ、提督のお勧めは名作と良作のオンパレードである。偶にアタック系などを突っ込んでくる捻くれ具合ではあるが。
「やたらラブロマンス物を買ってくるうちの妹に比べれば、まだ無害ではあるのだがな」
言うまでも無く、狼さんの方である。余談であるが、彼女の姉妹の作品傾向は、羽黒が青春ラブコメ系とアクション、足柄が駆逐艦娘はちょっと見れないラブロマンス、那智は黒澤作品系とコナンシリーズ、妙高がミステリーとサメである。
「まぁ、100人以上の艦娘が所属するこの鎮守府だ。個性は多くあって当然と言うべきだが」
「でしょうが、さて――提督のあれ、個性で済ませてよい物かどうか」
青葉の言葉に、那智は額をおさえてうめいた。
「もう半月か?」
「はい、そうです」
青葉は自分の手に在るメモを見ながら、ノック部分でこめかみ辺りをかきながら頷く。
「着任して以来、執務室からは一切、本当に、一切、まったく、これっぽっちも、出ていません」
「食事は我々が用意しているが――風呂は?」
「あれ、知りませんでしたか?」
青葉の言葉に、那智は眉をひそめて同僚の顔を見つめた。
「提督、執務室にトイレとバス、つけましたよ」
「何をしているんだあの人は……」
頭を抱える那智に、青葉はけらけらと笑って手を振った。面白くて仕方ない、と隠さず顔に書いてあるのは、自分の情報を口にできるのが嬉しいのか、それとも那智の姿がつぼに入ったのか。
「最初は流石に渋っていたそうですが、明石さんと妖精さん達が提督に命令され嬉々として設置したそうです、あ、お手伝いに夕張さんと北上さんも行ってますよ」
「納得の面子ではあるが……」
那智は脳裏に、名の上がった艦娘達の顔を思い浮かべた。明石は言うまでも無く工作艦であり、妖精達は生まれながら各々の分野の職人達だ。夕張は明石の友人で機械や工作にも強いだろうし、特に接点もなさそうな北上にしても、工作艦経験者である。
脳裏に在る人物達がそろえば、確かに執務室にトイレとバスを設置する事も難しくは無いだろう。
「あぁ、ちなみに、その時執務室の隣にあった物置部屋に三割ほど侵食したそうです」
「まぁそうなるな」
「なんですか日向さん」
「那智だ。あぁ、それにしても、まったく……提督の引きこもりに加担した様な物ではないか」
那智は憤懣やるかたなし、とい
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