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「さて、っと」
提督、と呼ばれる男は椅子から腰を上げ、背筋を伸ばした。
――朝ごはんも食べた。
白露型駆逐艦娘達の合作であり、持って来たのは最近鎮守府に所属する事となった江風であった。
――秘書の初霜さんも、仕事に出た。
大淀と長門の指示で第一艦隊に編成されたので、今頃は攻略海域だろう。
――書類もまぁ、昼までの分は終わった、かな?
特に人の手を借りるような事もなかったので、提督一人でもどうにか出来たらしい。
腰をぽんぽんと叩きながら、提督は自分に与えられた執務室を見回し、最後に壁にかけた時計を見る。昼の弁当当番が来るまで、つまり休憩時間まで随分と余裕のある状態だ。
となれば。
――昨日大淀さんに貰ったインスタントラーメンか。
昨夜遅くに大淀に頼んだそれは、その日のうちに大淀の手によって提督に届けられた。その後どこからか「んにゃ!? んにゃー!!」と猫の鳴き声が聞こえてきたが、発情期の猫が喧嘩でもしているのだろう、と提督は流した。
提督はインスタントラーメンを昨夜片付けた執務机横の小棚から取り出そうとしたが、何事か突如動きを止めた。
「いや、待てよ……」
深刻な顔で、一人呟く。提督は自身の腹を数度さすり、それから二度ほど腹を叩いた。
――あ、これあかんやつや。
若干のぷるんぷるんとぽよんぽよんがあった。なるほどの結果であると、提督は頭を抱えた。
見目麗しい艦娘達に用意してもらう三度三度の食事は、若い男の胃袋には大層魅力的であり、健啖家でもなかった提督でも箸の進む物であった。愛らしい少女の用意して貰う上に、更に食事が旨い場合もある訳である。食欲を抑えられる筈も無く、若い提督は自身の欲望に抗おうともせず半月過ごしたのであるから、幾ら若いといっても余分な脂肪が増えてしまうのも仕方ない事であった。
「手っ取り早いのは、まぁランニング、とかなんだろうけどなぁー……」
恨めしげにドアを見て、提督はため息をつきながら首を横に振った。
「ダイエット目的で現状できる事と言えば、まぁ、少ないけど無いわけじゃ……」
独り言も呟いていた提督は、その途中で口を閉ざし言葉を飲み込んだ。
廊下から、「ヒェッ……」という言葉が、僅かに、だが確かに聞こえたからだ。提督の耳に届いたその小さな悲鳴は、間違いなく聞き覚えがある物であり、そうであれば――
ドアがノックされる。
控えめの音がいかにもらしい物で、提督は苦笑で応えた。
「開いているよー、神通さん」
提督の言葉から十秒程空いて、扉は開かれた。そこから顔を出したのは、提督が予想し、口にしたその艦娘であった。
「あ、あの……失礼いたします
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