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執務室の新人提督
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大淀には、先ほど足柄が口にした言葉に、なんとなくの答えが見えた。

「確かに、提督は着任して以来、皆の手料理ばかり口にしていますからね……変化が欲しかった、と言う事でしょうか」

 ふむり、と一人納得して頷く大淀はレジ打ちを再開し始め、料金を告げる明石にきっちり分を渡して、後ろの足柄を待った。

「あら、待ってくれるの?」
「流石にお酒は一緒出来ませんけど、帰り道くらいは一緒しますよ」
「悪いわねー」
「しかし、男はレア物に弱い、ですか? うちも何かそういうの入荷したほうが良いんですかね?」
「レア物って……何を入れるんです?」
「……お酒?」

 丁度明石の手に足柄の持ってきた酒瓶があった為か、彼女は反射的に応えてしまった。
 
「どこぞの軽空母とうちの姉が根こそぎ持っていくに一票」
「私もそれに一票」
「ですよねー。ほんとそれですよねー」

 事実である。大抵新規入荷の酒はその辺りの艦娘が購入する。さらにはお客様アンケートの八割は酒売り場拡張希望である。酒はガソリン、等と口にする者もいるが、実際には必要の無い余分である。が、その余分がなければ戦意と士気が維持できないのも事実だ。
 余裕があればこそ、余分が出来る。艦娘も人間も、そういった側面は何も変わらない。
 
「レア物、レア物かー……」

 器用に、レジ打ちしたまま、むむむ、と眉間に皺を寄せて考え込み始めた明石は、しかし僅かな時間でその表情を常の物に戻して見せた。
 そして、
 
「レア物!」

 満面の笑みで自身を指差した。
 大淀は明石の姿に、腕を組み顎に人差し指をあて何事か考え込み始めたが、こちらも直ぐに戻ってきた。そして、
 
「レア物です」

 きりっとした顔で眼鏡の蔓を指で微調整していた。
 
 通常海域と通常建造でドロップできる赤い芋ジャージ姿の足柄は、建造不可でイベント海域と高難易度海域低ドロップ率な二人には何も答えず、悲しげな顔で天井を見上げ、ぽつりと呟いた。
 
「そうね……レア物だからって、貰ってもらえる訳じゃないのね……」

 所詮本よねぇ、とため息をついた足柄が、その後明石と大淀に何をされたは、誰も知らない。
 当事者達をのぞいて。
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