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――これはなんだ。
未だ陽も差さぬ暗闇の中で、息苦しさに目を開け、手のひらを広げて見つめる。
――これはなんだ。
窓に目をやり、そこに仄かに映る誰かの顔を見て、自身の顔を掌で覆う。
――これは、自分だろうか?
分からない。
――これが、自分だったろうか?
分からない。
ぐるぐると視界は回り、目は閉ざされる。
――自分なのに、自分が分からない。
何もかもが、シャットアウトされた。
「ふ……あぁ」
意識せず漏れた欠伸を、初霜は噛み殺し周囲を見回す。昼時を幾らか過ぎた頃である為か、今初霜が佇む食堂は、閑散としたものだ。彼女は誰も今の欠伸を見ていない事を確かめ、ほっとため息をついた。
――こういう日は、背骨が痛むわ。
目覚めの悪い日は、いつもそうだ。彼女の前――前世と言うべき艦時代の最後による物だろうか、どうにも、傷む事がある。
なんとなく初霜は背を気にしながら、今度は重いため息を吐いた。
そんな初霜に、近づいて来る影があった。その影はそっと初霜の背後に回ると、ぽん、と軽く肩をたたいた。
「おはよう、初霜」
「あぁ、もう、吃驚したじゃないですか、時雨さん」
「ごめんごめん」
時雨と呼ばれた黒セーラー服姿の、横で小さく跳ねた髪がどこか犬を髣髴とさせる駆逐艦娘である。時雨は初霜の隣の椅子を引き、それに座ってテーブルに置かれたメニュー表を手に取る。
「時雨さんも今からお昼ですか?」
「そうなんだ。演習でちょっと手間取ってね」
「なるほど、じゃあ他の人達もそろそろ来ますね」
初霜がそう言ったと同時に、扉が勢い良く開かれ、閑散としていた食堂に声と数人の姿が入ってきた。
「おなかへったっぽーい!」
「そうですねー」
「あの、扉はもう少しゆっくり開けたほうがいいかも……」
「……もう、帰りたい」
「来たばかりですよ」
演習は、通常一艦隊六隻対一艦隊六隻の同数によって行われる。となれば、先ほど来た時雨を別にすれば、五人が新しく食堂に入ってきた訳である。そしてその五人が、先にいた時雨、更にはその前に居た初霜を含めて、濃い。どれくらい濃いかと言うと、食堂に残っていた数名の艦娘と食堂の主間宮が一斉に目を剥いた程度に濃い。
「間宮さん間宮さーん、夕立いつものスタミナ定食大盛りっぽーい」
時雨の横に座って、早速注文する夕立。
「綾波、肉じゃが定食ですー」
初霜と時雨に微笑みながら会釈してから、マイペースに席に着く綾波。
「うーん――うーん、と、今日は何にしようかなぁー」
メニュー表を片手に、うんうんと唸る高波。
「なんでもいい……浜風、任せた
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