第十九話「HAWAIIAN・BLUE」
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いや……流石に、そこまでは……さ?」
「私じゃ……嫌、ですか?」
再び、そんな目で見るから俺は断ることができない。しかし、俺もここで引き下がるわけにはいかない……
「……いいよ? 一緒に、寝ようか?」
俺はさらに勇気を振り絞ってそう答えた。
「じゃあ……よろしくお願いします」
俺たちはお互い、赤くなりながら布団を敷いた。そして、蛍光灯を消してお互い布団に入る。
一人分の布団だから、互いの体が密着している。
「……もう少し、寄ってもいいですか?」
弥生は、さらに寄り添ってくる。静かな暗い部屋の中にあるものは、互いの緊張と鼓動の高鳴りだけである。
彼女の豊かな胸が、俺の腕にしがみ付き、その柔らかみとぬくもりが全身に伝わってくる。
「狼君……」
さらに彼女は、仰向けに寝る俺の胸元へ片手を添えた。
「狼君の胸……温かいです」
「や、弥生……」
たまらなくなった俺も、彼女へ寝返りうってその細い肩へ手を添えた。
「狼君? その……」
また顔を赤くする弥生は俺に何か言う。
「なに……?」
「その……腕枕、お願いできますか?」
「腕枕?」
「ダメ……ですか?」
「……いいよ、ほら?」
俺は片腕を彼女の方へ投げ出した。
「じゃあ……失礼します」
と、彼女のあまたがチョコンと俺の腕に乗っかる。浴衣越しとはいえ、彼女のさらさらな髪の肌触りが伝わってきそうだ。そして、彼女の頭が動いている感覚もあって少しこそばゆい。
「寝にくく……ないですか?」
「ううん? 大丈夫だよ……」
「そのまま……狼君の胸へ寄り添ってもいいですか?」
「お、俺の?」
「もっと……狼君の温盛を感じたいんです」
「……」
俺は、少しためらった。だが、いつまでも冴えない男のままじゃいけない。そして一人の年上の男性として、大人として、弥生という思いを抱く少女に父性を引き出した。
「おいで? 弥生……」
しかし、弥生を妹のように思えば、そう緊張はしない。むしろ、舞香と歳の近い年頃か、一つ上といったようかもの。どちらにせよ、彼女を甘やかし、溺愛する兄のようになればいいのだろう。そうすれば、今彼女が一番求めている存在に近づけるかもしれない。
「はい……」
彼女は、俺のそのような行為を受け入れてそっと俺の胸へ寄り添った。
「狼君って……何だか、お父様みたい」
俺の胸板に顔を埋める弥生はふとそう口にした。
「俺が……?」
「はい、優しくてカッコいい、私の大好きなお父様に……」
「俺は父親ってよりも、兄って感じだよ?」
「お兄様……か?」
「一様、最近まで兄やっているからね?」
「お父様のようなお兄様……とても素敵」
*
今宵は月が綺麗に映っている。その月光を浜辺で浴びる箒は、明日が待ち遠しく寝付けることができずにいた。
――いよいよ
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