第5章 汝平和を欲さば戦に備えよ
第41話 善悪の彼岸
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し事をされたとしても問題ない、か。さすがは、はやてちゃんよね」
はやての名言を当てられて目を丸くするヴィータだったが、そういえば、あの場にシャマルもいたか。と、思い出す。
あれは、まだはやてと暮らして間もないころ。初めての『自由』に慣れずにいたころ。すでに、はやての温かさに触れ絶対の忠誠を誓っていた。けれども、不安だった。忠誠という目に見えないもので、はやてに信頼してもらえるのだろうか、と。
そんな彼女たちに、はやてが送った言葉だった。
口さがない人間は、人を疑うことのできない小娘の戯言かとやじるかもしれない。けれども、はやてのその言葉こそ、ヴォルケンリッター全員が求めていた言葉だった。
100%の忠誠には100%の信頼を。そのときの歓喜をいまだに覚えている。身体の底から嬉しさに包まれたさまを、まざまざと思い出せるのだ。一瞬の夢想にふけてから隣に目をやり瞠目した。
「はやてちゃん……やはり、あなたは優しすぎる」
シャマルが「本気で」泣いていた。演技かどうかなんて長い付き合いのヴィータなら造作もなく見抜ける。そんなシャマルのなき姿など、滅多にお目にかかれない。
いや、はやてのとこにきてからは、ぐっと人間らしくなったか。家族としてのヴィータはそう思って喜ぶ。――だが。
「シャマル、例の計画。情に流されてないだろうな」
戦士としてのヴィータは別だ。主を守るためなら、情など不要。それが一番求められているのは、参謀たるシャマルだった。
だが、杞憂だったようだ。涙を拭いてヴィータをにらみつけるシャマルは、冷徹でかつて共に悠久の時を戦い続けた戦友の姿だったのだから。
「ご忠告ありがと、ヴィータちゃん。けれども、心配いらないわ。曹操もアーシアちゃんも、予想以上の逸材よ」
「そか。ならいいんだ。じゃ、冷めないうちに食べときな」
「私は一人ごはん、つれないわね」
そうぼやくシャマルに振り返ってヴィータはにやりといった。
「だって、そんな泣きづらのままはやての前に出られないだろうが」
「っ!」
あはは、と楽し気に笑いながらヴィータは去っていった。
「もう、ヴィータちゃんったら。あら、このお肉本当においしいわね」
少し冷めてしまったすきやきをほおばりながら、まなじりを下げる。けれども、ヴォルケンリッターの頭脳として、感情を排して計算し続ける。少しでもはやてがハッピーエンドを迎えられるために。
◇
「おかしいな? なんでアーシアがいるの?」
「はやてさん! 私は存在しちゃいけないんですか!? 酷いですぅ……」
わざとらしく泣きまねをするアーシアは放っておいて。いま、冥界にあるプールにきている。もちろん、普通のプールではない。「禍の団のアジトにある
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