6部分：第六章
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第六章
その彼女にだ。友人達が声をかける。
「まあまあ」
「気にしない気にしない」
「気を取り直してね」
「そうしなさいって」
「気軽に言うけれど」
陽子はそんな彼女達にだ。困り果てた顔で返すのだった。
「あのね、私ね」
「私は？」
「どうだっていうの？」
「あんなところ見せたくなかったのよ」
こう言うのであった。
「絶対にね」
「絶対になのね」
「そうなのね」
「そうよ」
また言った。
「絶対に見せたくなかったのよ」
「まあ人間そうしたものってあるけれどね」
「誰でもそれはね」
「あるわよね」
「だからよ。あんなことになって」
こう言っていくのだった。
「もう。どうしていいか」
「弱点見せたくなかったのね」
「そういうことなのね」
「そうよ」
まさにそうだというのである。
「どうしよう、本当に」
「そんなに悲しむことはないわよ」
しかしだった。ここで友人の一人がこう彼女に話した。
「別にね」
「別にって？」
「そうよ。皆言ってるけれど」
「皆が？」
「人間誰だって弱点はあるわよ」
陽子に言うのはこのことだった。
「誰だってね」
「誰だってなの」
「そうよ。私だってそうだし」
他ならぬ彼女にしてもそうだというのだ。
「あれよ。グロとか駄目だからな」
「それがなの」
「そういうこと。そうした意味であんたと同じよ」
極端な怖がりの陽子と、というのである。
「そういうことよ」
「そうなの」
「何度も言うわよ。誰だって弱点はあるの」
またこう陽子に話した。
「人間だからそれは仕方ないの」
「人間だから」
「むしろね」
「むしろ？」
「陽子に弱点がなかったら」
どうかとだ。そうした話になった。
「全然面白みがないわよ」
「そうよね。機械じゃないんだから」
「それはね」
「その通りね」
他の友人達もその言葉に頷く。まさにその通りだというのである。
「陽子って完璧超人かって思ってたけれど」
「そうしたところもあるって」
「そうよね。わかってね」
「よかったわよ」
こうだ。それぞれ笑顔で話すのだった。
「人間誰だってそういうところがあるのね」
「ちゃんとね」
「じゃあ私は」
陽子はだ。皆からの話を聞いてだ。
少しずつその困り果てた顔を普段のものに戻してだ。こう言うのであった。
「それを特になのね」
「そうよ。不安に感じたりすることはないのよ」
「そういうこと」
「つまりはね」
「誰だってそうだからね」
「そうね。じゃあ」
気を取り直した顔でまた言った。
「私もね」
「そうよ。弱点は弱点として受け入れてね」
「そのうえでやっていけばいいのよ」
「確かに怖いのは駄目だけれど」
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