とある村にて
第3話
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え、その人物がいた痕跡すらも消え去ってしまう。
まるでこれはーーーあのときとーー
グウゥゥ〜〜〜〜
そのとき、なんとも気の抜けた音が静まり返っていた空間に響く。
「あっ……あははは…………」
横を向けば、ニケが物凄く、ものすごーく申し訳なさそうにお腹を両手でさすっていた。
お前というやつは…………お陰で考えも吹き飛んでしまう。
…………気不味い。物凄く。
奇妙な沈黙の中で彼女はクスリと笑いをもらす。
「もうけっこうな時間ですし、よろしければ何か召し上がりませんか?」
「簡単ですけれど、シチューくらいならご用意出来ますから」
そう言って彼女は立ちあがり、隣の部屋へと歩いていく。
「わぁい!ごはん!ごはん!」
ニケは無邪気にはしゃぐ。その緊張感の無い姿に思わずタメ息が漏れた。少しは遠慮というものを知って欲しいものだ。
その姿を見られたのか、ニケは「ムッ」とした顔をして彼へと詰め寄る。
「ご主人さま?タメ息つくと幸せが逃げちゃいますよ?」
「いつも笑顔でいませんと!」とにこりと笑う。
ため息はお前のせいだ、とニケの額にデコピンを食らわせる。パチンと小さな音がなる。
ぷぎゅ!?と額を押さえてうずくまるニケを放置して、改めて彼女に礼を述べる。後ろから「ぼうりょくはんたい〜〜」とかいう声が聞こえる気がするが、気のせいだろう。
そんなニケを見てか、彼女の顔にクスクスと笑みが浮かんでいる。どうやら先程の暗い雰囲気は多少は収まったようだ。
しかし、今さらではあるが良いのだろうか?自分達は今日会ったばかりの他人である。小さな女の子をつれた男とこのような時間まで人通りの無い小屋で二人きり。更には食事まで頂くというのは如何なものだろうか?例え彼女はよくとも彼女の母親は…………
そこまで考えてみれば彼はハッと気が付いた。
初めて彼女に会ったとき、彼女は言っていた。
「もう、ここには誰もいない」と。
つまり、それはーーーー
その時、鼻に届いた食欲をさそう香りに考えを中断し顔を上げる。ちょうど戻ってきた彼女がテーブルにシチューが入った皿を並べるところだった。
「作り置きですけど」
「わ〜〜い!ごはん!あったかいごはん!」
漂う美味しそうな香りにニケがはしゃぐ。
…………とりあえずは食事をいただく事にしよう。
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