第二十二話:フィルター越しの対話
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いう事なんだろう。
何時もの突飛な行動は、突飛でも何でもない……理屈あってのことだった。
「当たり前だろうが……飯食うのも、初めてだよな」
「そう。優子の作るご飯はとても美味しかった。麟斗が用意してくれた丼も美味しかった。そこで、“美味しい”という言葉がどれだけ素敵なモノなのかを知った……」
美味しい物をもっと食べていたい。
温かみこそ理解出来るまで時間を要するが、コレばかりは考えるまでもない当たり前のことだった。
自分の大好きな物を、何の制限もなく好きなだけ食べて居たい。
誰でも一度は考えるだろう、その願いの中の『大好きな食べ物』が、コイツにとっては大多数の食物だった……ただそれだけなのだ。
相手は死神だから、殺戮の天使から、人間じゃあないから―――何より理解に苦しむ行動しかしないから。
そんなものをフィルターとしていたのなら、想いを重ねる事をあり得ない思うのが当然だった。
真実に近付こうとして、実際はずっと遠ざかっていたのだ。
俺の周りにいる人達と同じ事を、知らず知らずのうちに俺も実行してしまっていたのか……。
「……何も変わらないな、人間と……俺達と。ただ初めて尽くしで、抑制が効かないだけだ」
「……麟斗……」
「可か不可か……俺自身だけで、決めていい事じゃあ無い……悪かった」
未だにマリスの両手に包まれて、指を伸ばしたままだった左手を動かし、ちゃんと握ってやる。
「……温かい……とても……」
既にいつもの口調へと戻ったマリスだが、それでも俺が聞いた限りで、まだ情感を込められた声音で呟く。
常人にとっては体温など気に留めるものでもないし、俺自身マリスの話を聞いたとて、その感覚が変る事など無く、当たり前以外の何物でもない。
けれど、今は何故かとても温かく、そして尊いと思えた。
……左手の甲が、特に熱を持っていると感じた。
「……」
「……」
手こそ放してくれたものの、互いに背中合わせとなったままで、何を喋るまでもなく静寂の中二人して座っている。
煩くないのは好きだが……静かすぎるのも、それはそれで困りものだ。
「……そろそろ寝るぞ。明日もまだ、やる事はあるからな」
せめてベッドで寝ようと、二階に上がるべく立ち上がって―――服の裾をマリスに掴まれた。
「……皆で、此処で寝る」
「何でだ……」
「……もし【A.N.G】が強襲してきた時の為、私がすぐに守れるように」
「……」
軽く非常な事を言ってしまえば、今この時の穏やかな感覚は……マリスの思いの丈をぶつけられた影響からの、恐らく一時的な物かもしれない。
時間が経ってしまえば、俺もコイツが
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