第二十二話:フィルター越しの対話
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俺のこと自体を見ない周りの奴等とは違っていて……だからこそ、透明だと思ったのだ。
「貴方の手が私に触れた時に思った! この人をパートナーにしようと、パートナーにしたいと!」
「……何故だ」
「分からない! 敢えて言うなら、直感としか言えない!」
「……お前にしては、非合理的だな……」
「そう、とても非合理的な理由! だけど私はこの人と離れたくないと思った、心を重ねられると思った!!」
「その直感が外れているならどうする気だ?」
『異なる概念』の存在を考慮に入れたとしても、想いが重なりそうな場面はあったのに、実質成功した試しがない。
「時間の問題にきまってる。麟斗は何処か心が寂しいけれど、でも冷たくはなかった。温かい心も持っていた」
「……」
俺は……人間として最低限、抱く筈の感情を優先して動いただけだ。
なのに、面と向かってそうまで言われれば流石に直視しずらいモノがある……。
だがそうだろうとも、俺も目線は逸らさない。
「麟斗と出会えて、私は運が良かった」
「……運か」
感動している所申し訳ないが……正直、俺自身は “運が悪い” としか言いようがない。
いきなり転生して訳分からない世界に放り出され、愛情はあれどそれ以上にストレスがたまる奇妙な家系に生まれ、その所為で髪の毛の色まで変わって一時奇異の目で見られ、幼馴染は理不尽の連続ばかり叩きつけてきて、癒しであった妹は今は毒素に他ならず、教師達は兄貴ととことん比べてきて、調べた上で選んだ高校は兄貴の卒業校で周りの状況は変わらない。
更に【A.N.G】なんて者が生まれ周りにも迷惑をかける羽目になり、その所為で御袋のラブコメ病は悪化し、親の理不尽はさらに加速する。
何より、普通の人間と同じものが食えねえんだ……コレを “不幸” と言わずして何といえばいい。
だが不幸から逃れようと必死扱いてばかりか、と言われれば当然そうではなく……何となくや直感で日々を過しているのも、其方に傾く日々のほうが多い事も否定はできない。
寧ろ、そういった人間の方が……万事理詰めで行動する人間などごく少数じゃなかろうか。
そして普通の人間が「なんとなく」日々行動しているように―――このマリシエルもまた、同じだっただけなのか……。
「麟斗は言った、ぬいぐるみが珍しいから触っていたと……」
「ああ」
「違う。私は誰かに触れるのも、触れられるのも好き……気持良い感触も人肌の暖かさも好きだから、何より楓子が麟斗へくっ付いていたのが、とても羨ましかったから……」
つまり……今までずっと冷たい空間の中で過していたのだから、知りたい物がやっと目の前に来たのだから、温かみをより長く直に感じて居たいと、そう
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