第二十二話:フィルター越しの対話
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としていたマリスは、俺の一言で近寄るのを止めた。
心なしか落ち込んでいるように見えるのは、恐らく気のせいではない筈だ。
反省してくれたのならいいが……。
「お前は死神だったな」
「……そう」
「だからこそ“そんな事”が平然と言えるんだろうな。元が人ではないから価値観が理解出来ないし、それに人間的な情緒が欠如してんだろうよ」
蛇足かもしれないが、コレから箍の外れた行動をされても困ると思い、一応言い諭す事にする。
「ぬいぐるみも今まで触った事ない物に対する興味からだろ。……俺達の為を思って一刻も早い行動を優先しているとしても、俺にとっては理解できない奇行でしかない」
話している間マリスは、親父に叱られている際に目を逸らす楓子とは対照的に、ずっと俺の目を見つめたまま聞いてくれていた。
透明な瞳が俺を見据えるが、此方も目をそらさず敢えて視線をぶつけて話を続けた。
「だからお前と想いを一つに重ねるなぞ無理、無駄だ。よしんば努力しようとも不可能に近いんだよ」
「……」
マリスは何も言い返さない。
ただじっと、俺の事を見ているだけだ。
そしてその瞳を一層見開き―――――
「違うっ……」
眼の色と同じ、透明な涙をこぼした。
「それは絶対に違うっ!!」
「……!?」
デパートの時の様に、確りと新まで響く程の感情が込められている声で、マリスは俺に向けて叫んだ。
否……その振りしぼられた声から感じる剣幕は、デパートの時とは比べ物にならない。
声のボリュームを落とせという暇もなく、マリスは俺へと言葉を叩きつけてくる。
「私たち死神は貴方達を見る事が、話を聞く事が出来る!! でもっ……干渉する事は、触れる事は出来ない!!」
感情をぶつけながら俺の手を握り、更に至近距離から思いの丈をこれでもかと放ってくる。
「だから貴方に初めて触れられたとき……私を敵だと思い、皆を庇う時に触れた時、貴方の温かな体温を感じた!! 暖かいという言葉が、どれだけ素敵な物かを知った!」
訴える間もずっとその透明な瞳は俺を捉えて放さない。
そう透明。
そういえば俺は、コイツの瞳をずっと透明だとは思えど、虚ろだとは思えなかった。
当たり前だ……初めて触れる事が出来る、はじめて干渉できる、そんな存在と喜びを前にして、虚空を見つめながら話す筈がないからだ。
こいつはどんな時でもずっと、相手の目を見て話してくれるからだ。
自分の意見だけを盲目に持つ者、理由もなく虐げ続ける者、兄貴と比べる者、自分のルールと価値観を何より優先する者、妄想を全て俺に当てはめようとする者。
そんな
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