第7話 影の女王は闊歩する
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隙間からだったが見えたのだ。
将棋盤を挿んで鉄心と向かい合っていたのが、白昼夢で片づけられた絶世美貌美女だと。
(今度という今度は逃がさん!)
最早意地になっていた百代は礼を失するなど知った事では無いのか、勢いよく鉄心の部屋の襖を開いた。
「なっ!」
しかし開けた先には、プロの過去の棋譜が載った将棋本を開いて横に置いたまま、鉄心が1人で将棋の勉強をしているのかの様な光景だった。
百代が見た時は確かに向かい側に座布団の上に座った標的が居たのに、座布団まで無くなっていた。
「なんじゃモモ、その顔は?と言うか襖とは言え、枠でもいいからノックくらいせん――――」
「そんな事は如何でもいい!それよりも爺ぃ、今此処に誰かいただろう!?」
「誰とは誰じゃ?さっきからずっと、儂しか居らんかったぞい?」
「う、嘘だ!そうやって皆で私を変なモノ扱いする気だな!?」
最早正気では無いのか、意味の分からない事を口走る孫に鉄心はため息をつく。
「よく解らんが、混乱しているのなら頭を冷やすんじゃな」
「っ!分かったよ!」
鉄心の言葉に怒りがさらに高まったのか、やけくそ気味に襖を思い切り閉める。
勿論、百代が力いっぱい占めれば襖が壊れるので、気による操作で衝撃を可能な限りに弱めて破壊されるのを防ぐ。
鉄心からすれば何時もの事なので慣れたモノだった。
そんな百代を見送った後にまたも鉄心はため息をつく。
百代の指摘は正しく、確かに先程までそこに居た。
士郎の魔術師の師と言う事でそれなりに歓迎したが、正直鉄心が今日まで生きてきた誰よりも以上に心が読めない人物だった。
そのおかげで、将棋では八方ふさがりの王手を掛けられて苦悩していたのだが、そんな処で百代が入って来たので、ある意味グッドタイミングだった。
襖を開ける前に姿を見られたスカサハは、面倒だと言う理由から今日はもう帰ると言って後片付けをした上で、百代の視界に入っているにも拘らず、彼女に気付かせないレベルの気配殺しの歩法を使って帰って行ったのだ。
「兎も角トンデモナイ相手じゃったな」
その言葉が、ある意味では鉄心のスカサハへの初見の評価だった。
因みに、スカサハは帰宅してから士郎に聞いたのだが、自分の容姿に酷似した幻想の様な魔法の様な美女が川神各地に出現したと話題になっていたのを聞いて、流石に反省した。
その理由からスカサハは今、認識阻害のブローチの作成を始めた様だった。
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