第3章 リーザス陥落
第78話 ホッホ峡の決戦Z(終)
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失ったのかを、考えたのだ。
「……承知いたしました。 撤退だ!! ジオにまで引いて決戦する!!」
ガイヤスの号令とともに、伝令が走り、周囲の兵たちは移動の準備を始めた。
「………ロバートはどうした?」
トーマは、ガイヤスに訊いた。
まだ、トーマの耳には届いていなかったのだ。
「……報告がありました。……副隊長を庇って……」
「……………そうか」
皺が深くなった眉間を、指先で抑えるトーマ。
奇抜な男だったが、それでも失ってしまえば、喪失感は大きい。妹を庇ってとなれば、本懐だろうとは思えるが、それでもだ。
そんな時。
「おお……将軍閣下。今回は残念でしたな」
いつの間にか、此処に軍人ではない男がきていた。小奇麗なスーツに身をまとわせ、戦場では明らかに浮いた格好。
「ジオの……シルサブン都市長? 戦場に何の様ですか」
そう、彼はジオの町の市長。
早々に降伏し、更には、ヘルマン軍をもてなすまでの行動を取った市長だ。故に、ジオの町の損害は最小限。いや、殆ど受けていないまでに回避する事が出来た。彼もまた老獪さを持っている市長である。
「いえ、少しご提案を、と思いまして……」
「提案……?」
「様子を見に来てみれば、解放軍は随分と勢いがある様子。ジオでは防備固めが間に合わないのでは?」
「…………」
それは、明らかに素人ではない眼だった。実に的確な判断と見解だ。
「なので、ジオに戻るよりは、オクに行かれてはいかがでしょう。手のものに、案内をさせましょう」
「むざむざとジオを明け渡せと?」
「十分な補給物資をオクに運ばせております。そこから捲土重来なさってはいかがでしょうか」
トーマはそれを訊いて、ゆっくりと頷いた。間違いなくそれが最良の手段。ジオの地形を考えたら、迎え撃つには頼りない。ならば、ジオを奪還させている間に、力を貯め直し、万全な態勢で迎え撃つ方が理にかなっているのだ。
「……よかろう」
「おお! それではあとで人を寄越します。またお会いできる日をお待ちしますぞ」
喜々とした様子で駆け足で戦場を去っていく男の後ろ姿を見て、トーマは思った。
「(……全ては自分の町の為、肥える為、か)」
……それも間違いないのである。
場に残ったガイヤスは、トーマに確認を取った。
「よろしいのですか?」
トーマは首を縦に振る。明確な理由は勿論あるからだ。
「敵将は随分と果断な判断をする。……そして、一騎当千の強さを持つ者達も多数いる様だ。体勢を立て直すのには時間が必要だろう」
「……わかりました。直ぐに準備させます」
「いくらか、兵を率いて殿軍に出る。先導は任せた。……これくらい、止めてくれる
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