Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 27. Rainy, Sunny
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「……この世界、墓地っつったら、ダンジョンみてえなホラーテイスト全開のヤツしかねえだろ? あんなトコに参るのなんかイヤだったから、ここ何日かで一番それっぽい場所を探して、そんでココに決めたんだ。去年は確か、最前線だった三十何層だかの丘の上でやったっけな」
「去年と同じところじゃ、ダメだったの?」
「別にダメってことはねーけど……なんつーか、どうせ代わりの墓探すんなら、そん時で一番現実世界に近い場所にしたくってよ。本当の墓に行ってやれねえなら、せめてそんくらいの苦労はしねえとって思ってな」
ま、おふくろはそーゆー細けえことは気にしねえ人なんだけどさ。そう付け加えて、一護は苦笑してみせた。そのブラウンの目には、初めて見る彼の慈愛の色が映っていた。
不器用で優しいその瞳の色に、しかし私は見蕩れることはなかった。代わりに抱いたのは、何か別の複雑な感情。小さな針で刺されるような微かな痛みが心の奥でうずき出す。
「でも、それももう終わりにしてえ。残ってるフロアの数は六十一層を含めてあと四十。ペース上げて頑張りゃ、次の命日には何とか間に合う。いや、間に合わせるんだ。そのために俺は強くなったし、まだ強くなる」
「この世界を、壊すために?」
「ああ。そんで、現実で茅場をブン殴るためにな」
そう言って拳を握りしめる彼の姿は、勇ましく、力強く、一縷のブレも見えなくて。だからこそ、私は気づいた。ようやく、気づくことが出来た。
――ああ、そうだ。
私は、一護を護れる人になりたいんだ。
圧倒的で、比類ないくらいに強い今の彼には、戦力的な助けなどきっと要らない。下手に付きまとったところで、むしろ足手まといになるだろう。
しかし、そのまま強くなり続ければ、待っているのは周囲からの畏怖の感情。強すぎるが故に他者の常識を打ち砕き、無意識に遠ざける。周囲に多くの人が集まっていても、その人たちが内心で彼を恐れてしまえば、待っているのは強者の孤独。哀し過ぎる、剛力の代償。
例え一護がそのことを気にせずとも、敵を蹴散らし「仲間を護る」と叫ぶ彼にとって、その仲間との心の距離が開いてしまうのは決して嬉しいことではないだろう。
だから私は、その孤独から彼を護りたい。
そのためには、物理的に傍にいるだけじゃ足りない。心に寄り添い、理解し、感覚を分かち合うことが必要だ。
あの強さを持つ彼が現実世界でどんな生き方をしてきたのか、それを知る術はない。でもその代わりに、この世界に来てからの一年半の間のことなら、全て覚えている。怒り、眠り、笑う彼の顔も、その言葉も、欠けることなく私の脳に焼き付いている。一緒にいた時間は短くとも、その密度だけなら誰にも負けないつもり。そ
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