Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 27. Rainy, Sunny
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う。冷静な私が心中で告げる。全く持って正しい判断。いつも通りの、私の思考。
――けど、それでも気になった。
私はホームを出ると、そのまま宙へと身を躍らせた。
宙を踏みしめ、群島を蹴りつけ、南端へと駆けていく。虚空を蹴り風を切る感覚は、普段は心地よく感じるはずなのに、今はどうでもよかった。濡れて頬に張り付く髪も気にすることなくただひたすらに飛翔し、彼の元へと急いだ。
すぐに、一護の姿は見つかった。
周囲で一際高いところにある浮島。大きな石碑のような岩が突き出たそこに、雨具も持たず独りで立っている。手に持っているのは、花束だろうか。白、黄、紫のコントラストが、彼の纏う黒い襟なしコートによく映えていた。
なんて言葉をかけたらいいのか分からなくてそのまま突っ立っていると、一護は花束を岩の下に供え、ゆっくりと目を閉じて首を垂れた。その顔は相変わらずしかめっ面で、けれど、どこか優しいものを感じる不思議な表情だった。
私はそろそろと浮島に降り、静かに彼の隣に立った。一護はパッと片目を開いてこっちを見やったけど、結局無言でまた目を閉じる。
そのまま数分間、私たちは小雨が降る中、一言も発さずにただじっとしていた。雨音がはっきりと聞こえるくらいの静寂が辺りを埋め尽くし、この場所がアインクラッドではない、どこか別の世界のように感じられた。
やがて、一護は目を開き、石碑を見据えたまま言った。
「……なんか用か」
「ううん、別に。なんとなく来てみた」
「そうかよ」
「……いない方が、いい?」
「別に。ここにいても、面白いコトなんてなんもねーけどな」
「問題ない。貴方の愉快な横顔が見えれば、退屈はしないし」
「なんだそりゃ」
いつもの減らず口も、どこか勢いがない。というよりも、穏やかで柔らかい感じがする声だった。今まで聞いたことのないその声音に落ち着かなくなり、私も無名の碑を見つめながら、問いかける。
「ここで、なにしてるの?」
「墓参り」
「……墓参り?」
「ああ。今日は、おふくろの命日だからな」
「……あっ」
やってしまった。そう思った。
せっかく彼が一人でいたのに、その大事な時間を身勝手にも邪魔してしまったんだ。自分の浅慮を恨み、後悔が胸の内を支配する。
ひとまず今の失言を詫びなければ。そう思い、一護の方に身体を向ける。
「その、えっと……ごめんなさい。悪いことを訊いて」
「あ? なんで謝んだよ。別にわりーことなんてしてねえのに」
「でも……」
「でももクソもねえんだよ。俺が気にしてねえンだから、オメーが気に病む必要なんざ一ミリもねえだろ」
「…………ん」
小さく頷く私を見て、一護は小さくため息を吐いた。そのまましゃがみ込み、三色の花束に目を落とす
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