Side Story
無限不調和なカンタータ 2
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たコトないの?」
「……城下街で、何度か……」
「捌いた経験も無いのね……」
顔面蒼白になって力無く頷くカール。
あんたはいったい、どこの箱入り娘だ!?
こいつ、本当に『村』の出身なの?
狩りと採取は『村』の人間にとって必要最低限の生活術でしょうに。
「仕方ない。今回だけは、一緒に捌いてやるわ。ちゃんと見て覚えるのよ。でないと、その口の中に血を抜く前の生肉を無理矢理詰め込んでやるから。急いで枯れ枝を集めてきなさい」
「わ、わかった」
怯え、ためらいながらも、木々の影に溶けていく背中を見送り。
深いため息が溢れ落ちた。
人間の男って、もっとふてぶてしくて図太い生き物じゃなかったっけ?
死んでも良いとか言っといて、なんなのよ、あの線の細さ。
頼りなくて、情けなくて、みっともない……のに。
歌は良いのよ。歌だけは。
詐欺でしょ、あれ。
なよなよでひょろひょろの根性無しが、どうし……
あ。
しまった。
「あいつ、逃げるかな?」
小さな動物を解体するのは可哀想とか、怖くてできないとか言いそうだ。
「んー……」
逃がすつもりは無いけど、ちょっと様子を見てみようか。
戻ってくるなら、宣言した通り歪んだ自意識を実力に見合うまで徹底的に叩き直してやる。
けど、ここで逃げ出す小物なら、自由意思なんか要らない。
普段は『音』で操っといて、歌わせる時にだけ解放すれば、こんな茶番に付き合う手間も省けるし。
人間は短い年数しか保たない脆弱な玩具。
有効に活用してあげなくちゃね。
私があいつに惜しむのは、あの歌声だけ。
ようやく見つけた私の快音。
さあ、カール。
あんたの答えはどっち?
「ごちそぅさま、でした……っ」
辺りはすっかり真っ暗。
パチパチと爆ぜるたき火を挟んで、私の正面に座ってる男は。
号泣しながら食事を終えた。
「うっざ……」
律儀に枯れ枝を抱えて戻ってきたのは良しとして。
その後のウザさは常軌を逸してた。
涙が止まらないだけなら、まだマシ。
火を起こす時にも「ごめんね」を延々とくり返し。
本格的に解体作業を始めたら、頭の天辺から足の先まで汗だくになって、石像みたいに硬直しやがった。
最後まで目を逸らさずに吐き気も堪えた点は、ちょっと見直したけど。
多分、見慣れた肉塊になったのだろう瞬間「うわああぁぁん!」などと、すぐ隣で泣き喚かれてみなさいよ。
本気で殴りたくなるから。
「グリディナさんも……ありがとう、ござい……ました……っ」
顔を真っ赤に染め、荒れた目元を手首でゴシゴシと拭ってはいるが。
涙が切
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