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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十七話 カイザーリング艦隊(その3)
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俺は以前から気になっていた疑問が消えていくのを感じた。
アルレスハイム星域の会戦後、軍法会議が開かれている。この中でカイザーリングは一切自己を弁護していない。俺が気になっていたのはカイザーリングの幕僚達は何をしていたのかだ。原作の中では彼らがカイザーリングの弁護をした形跡が無い。
ありえない話ではないか。それは自己弁護でも有るのだ。カイザーリングが有罪になれば、カイザーリングのスタッフである幕僚達にも責任が有るという意見が出たはずだ。軍での将来は閉ざされると言っていい。彼らは不可抗力であった事を強く主張しカイザーリングを弁護してよかったはずだ、いや弁護しなければならない。
「カイザーリング提督は必死に艦隊の統制をとろうとしましたが彼らは無秩序に行動するだけで我々は何も出来ませんでした。何故彼らがそのような行動をとったかわかりません。カイザーリング提督は最善を尽くしたと小官は考えます」
そのような意見が出たらどうだろう。軍法会議のなかでカイザーリングの指揮能力の他に今回の敗因が有るのではないか、そんな意見が出たのではないか。そうすれば、サイオキシン麻薬が原因だとわかった可能性がある。だが現実にはそれは無かった。
俺は当初、それを司令部が壊滅的な被害を受けたからではないかと考えた。損傷率60%を超えたのだ。旗艦アーケンが被弾してもおかしくない。弁護すべき幕僚達はほぼ全滅したのだと。旗艦アーケンへの配属を命じられたとき、旗艦だからと言って生き残れるとは限らないと俺が考えた理由はこれなのだ。
だが彼らがバーゼルの仲間なら話は別だ。彼らにとってカイザーリングの弁護はバーゼルと自分たちの破滅に他ならない。平然と見殺したろう。いや、それだけではないカイザーリングに圧力を掛けた可能性も有る。カイザーリングの沈黙はヨハンナへの想いだけとは限らないだろう。なんとも後味の悪い真実だ。
「それにしても随分あっさりと自供しましたね」
「なんといっても、皇帝の闇の左手の命を狙って失敗したのだからね。少しでも罪を軽くしてもらおうと争って自供したよ」
「卿の演技のおかげだ。なかなかの役者ぶりだったよ、噴出すのをこらえるので大変だった」
「どうせ大根役者だよ、私は」
ようやく笑いが起きた。いいものだ、こうやって笑って話せる仲間が居る事は。カイザーリングには居なかっただろう。
「明日からは彼らの自供を元に民間の売人組織も摘発するつもりだ」
「民間もですか」
「ああ、証拠固めのためにね」
「はあ、何かだんだん事件が大きくなってきますね」
「全くだ」
「ところで、彼らはどうして小官が皇帝の闇の左手だと思ったんです」
「不自然だからさ。卿は不自然すぎるんだ、ヴァレンシュタイン大尉」
不自然すぎる。彼らは俺の
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