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変わるきっかけ
6部分:第六章
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 忠直も小声で健三に言葉を返す。大学生の部屋はとても奇麗に整頓されていてあちこちに女の子らしいアクセサリーが置かれている。それに部屋の中はローズの香りに満ちていた。
「それでどうしてそう言うんだよ」
「信じられないんだよ」
 健三は真剣な顔で彼に対して言う。
「何で御前と彼女が付き合えるのか。っていうかどうして御前があんな奇麗な人と」
「だから人徳だっつってんだろ」
 ここでも彼はそれを出してきた。
「何度言えばわかるんだ」
「わからねえよ」
 健三もこう言葉を返す。
「世界の七不思議にも入れていい位だ」
「そんなこと言ったら世の中は不思議だらけだぞ」
 忠直は健三の言葉に言い返す。少し怒った顔になっている。
「別にいいだろ。俺が奇麗な人と付き合えても」
「世の中やっぱりおかしい」
 健三は自分が中学生と付き合っていることは棚に上げて言った。
「全くどうなっているんだ」
「何とでもいえ」
 そして忠直も完全に居直る。
「それでだ」
「ああ」
 ここで話が動く。
「調べたら先生は四階にいるらしい」
「四階か」
「つまりだ。ここは三階だな」
 そこにこの大学生の部屋があるのである。
「すぐ上だ」
「じゃあ行くのは簡単だな」
「そうさ。先生は学校から帰る時間はいつも大体決まってるんだ」
「へえ、そうなのか」
「それも調べておいたぜ」
 意外と情報収集の得意な忠直であった。健三は心の中でそれを意外なことに思ったが今はそれは言葉には出さないでおいたのであった。
「だから今六時だから」
「もうすぐだな」
「そうさ。家には遅くなるって連絡したか?」
「いや、まだだ」
 それは今まで気付いていなかった。健三の顔が少し動いた。
「じゃあ連絡しとけよ。まあすぐに終わるだろうけれどな」
「すぐになんだな」
「先生の秘密を掴めたらな」
 忠直は笑って言う。
「それで終わりさ」
「何かやってることが探偵かスパイみたいだな」
「緊張するか?」
「緊張っていうよりはな」
 彼は首を捻ってその言葉に答えた。
「何かそれとは別のものを感じるな。悪いことをしているような」
「先生のプライベート覗くからか」
「そこまでする必要あるのかねって思ってな」
 健三はそれを気にしだしたのだ。流石にそれはよくないことだと知っている。先生が屋上のパーティーに反対しているのを知っていてもだ。
「そこんところどうなんだよ」
「仕方ないだろ」
 しかし忠直の決意は変わらない。
「そうでもしなきゃとてもパーティーなんかできないんだしな」
「けれど部屋の中に忍び込むのとかは止めておこうぜ」
「誰がそんなことするか」
 流石にそこまでは考えていないようであった。
「あくまで先生の弱みを握るだけだ。それでいい
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