暁 〜小説投稿サイト〜
無理が通って道理も通す
その2
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っさと行こう……
結局朝っぱらから沈んだ気分のまま、面接へと向かうハメになってしまった。

そして電車に乗り、移動すること30分。
会社に到着。
何回も就職の面接はやったことがあるが、これには毎回緊張してしまう。
どうも慣れない。

いや、慣れてはいけないのだと思うが……
特に今回は性別を偽っている。
どこでバレるかわからない。
慎重にいかなければ。

受付にいき、手続きを済ませる。
数分後、係りの人に案内され、面接の部屋へ向かう。

部屋に入ると面接官がいた。
オレがオトコとして行った時と同じ人だ。

望み薄かもな……
そんなことを直感で感じつつ、イスへと腰掛ける。

面接官の人はオレの履歴書を見やるとフンフンと唸った。
「ちょうどうちの課に女性の働き手がほしかったんだよね。君、真面目そうだし、ちょうどいいね。よし、合格」

………はい?

合格って言ったか?このおじさん?
いくらなんでも早過ぎだろ……?

それに部屋に入ってから2分くらいしか入ってないだろ。
冗談か?新手の冗談か?

イマイチ信じられない面持ちのオレを見て、面接官のおじさんは言葉を付け加えた。

「冗談じゃないから安心して。正式な書類とかは君が大学を卒業する少し前に送るから。じゃね。よろしく」

そう言っておじさんは足早に部屋から出て行った。
そして一人取り残されるオレ。

えぇ〜〜〜〜………………

心の底から驚きの声しか出なかった。

そしてまさかの面接から早半年。
年が明けた頃、書類が届いた。

「上手くいきすぎだろ……」
思わずそんな独り言がでてしまった。

書類にはいつ入社式があるのかや、通勤の手続き、社会保険の加入などの紙が入っていた。

入社は大学の卒業から3週間後か。
なんか成り行きでこんなことになっちゃったけど、大丈夫なのか?
やめるなら今のうちだぞ?
今からまだ引き返せる。
思わず、心の中で自問自答する。

しかし、引き返してどうなる?
この機会を逃したら就職浪人になってしまう。

それどころか二度と内定がもらえず、一生就職できないまま人生を終えるのかもしれない。
それだけは嫌だ!

結局オレは茨の道を選んだ。
その先にどれほどの苦労が待っているのかも考えずに。

そして入社してから早二年。
すっかり女装にも慣れ、オレはOLとして働いている。
女装なんかに慣れたくはなかったが。

自身の境遇についての回想に耽りながら、ウィッグの手入れを終えた頃にちょうど風呂がたまった。
部屋着を洗面所に用意すると服を脱ぎ、風呂に入る。
洗面器で身体にお湯を何回かかけてから湯船へと浸かる。

「ふぅ…」

やっぱり風呂はいいな。

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