暁 〜小説投稿サイト〜
無理が通って道理も通す
その2
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えず大学にいってやり過ごそうと考えた。

そしてそのまま、大学に入ったまでは良かった。
ここからだ、問題は。

あれだけ熱心に就職がどうとか言ってたのに実際はそうでもなく、むしろオレが大学に入ってからの方が氷河期はより厳しさを増していた。

案の定、就活をしても内定はもらえない毎日。
特に取り柄もなく、大学でも際立ってやりたいことも無かったオレには当然の結果だった。

そして大学4年の夏。
未だに内定が一つもない。
もう終わりだ……

そう思っていた時だった。
そんなオレを見かねた母さんが一言こういった。

「オトコで面接がダメなら女性として行けばいいじゃない」

「は?」

思わず反射的にそう聞いてしまった。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことである。

そんなオレに構わず、母さんは言葉を続ける。
「だからさ、女性として面接受ければなんとかなるんじゃない?とも君、女の子みたいな顔だし」

ここで名乗っておこう。
オレの名前は河野智明。

ちなみに名字は「かわの」と呼ぶ。
「こうの」では無いのでご注意願いたい。

さて話しを元に戻そう。

何を言ってるんだ?この母親は?
オトコがダメなら女性?
そんなことできるわけ………

と、ノーマルな思考回路ならそう判断していただろう。
だが、あいにく、この時のオレはノーマルではなかった。
就職への焦りから思考回路がショートしていた。
むしろ、「そっか!その手があったか!母さん、ナイスアイディア☆」とウインクしながら、そう思ってしまっていた。

今思えば、ここが人生の分岐点だったのだろう。

母さんの言葉を真に受けたオレは適当な(適当とかいって申し訳ないが、就職できればどこでもよかったので勘弁願いたい)会社に面接の電話をいれた。

もちろん、女声で会話をした。
元々声変わりがない影響で声は高いほうで、声色を変えれば女と勘違いされるほどだった。

そして面接の日程を設定したあと、自分に似合いそうなウィッグを購入し(この時、ウィッグを手にレジまでいったオレをその場の客とレジの店員さんが奇異な目で見ていたのは言うまでもない)女性用のスーツを買い、化粧道具を買い、より女性らしく見えるようムダ毛を処理し、面接に望んだ。

面接日当日。
家にある姿見の前で最終チェックを行う。

ウィッグはキチンと固定した。
化粧もバッチリ。
胸パッドもOK
うん、どこから見ても女の子だ。

むしろちょっと可愛い?
いや、ちょっとじゃないな。かなり。

「ウフッ」
鏡の前でニッコリ微笑んでみる。
うわっ、結構イケてる。
って、何やってんだ!?オレは!?

完全に頭が壊れてしまった……
自己嫌悪になる前にさ
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