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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十一話 二重スパイ
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だ……」

エーリッヒが何度か頷いている。
「なるほど、地球教は自分達が監視されている事を知っている。その監視を解く、その後を憲兵隊に密かに監視させるという事か、ギュンターを呼んでほしいと言ったのはそれが理由だな」
「そのとおりだ。こちらの監視が解かれたとなれば彼は地球教と接触する筈だ。そこから地球教を探れるだろうと思うんだ」

地球教がこちらの諜報員を二重スパイとして利用しようとしている。ならばこちらも同じ事をするだけだ。彼を信じている振りをして相手を罠にかける。どちらがより相手を騙したかを競う事になるだろう。

エーリッヒがギュンターに視線を向けた。
「ギュンター、私は良いと思うが卿の意見は」
「地球教を押さえるのは急務だ。喜んでやらせてもらう。だが一つだけ問題が有る」

問題? エーリッヒを見たがどうやら心当たりが無いらしい。
「命令系統をはっきりしておきたい。憲兵隊と広域捜査局第六課、どちらが上に立つかだ。面子とかの問題じゃないぞ、そっちとの共同作業になるからな、はっきりしておかないと後々厄介な問題が起きかねない」

「確かにそうだな」
俺の言葉にエーリッヒも頷く。
「アントン、広域捜査局第六課が指揮を執ってくれ」
「良いのか、それで」

ギュンターを選ぶだろうと思った。第六課の前身は社会秩序維持局だ。エーリッヒにとっては憲兵隊の方が信用できるはずだ。
「地球教の問題は広域捜査局第六課が受け持つ、そう決めたはずだ。それにギュンターも憲兵隊も暇じゃない、これ以上は過重労働だ。」

ギュンターに視線を向けると苦笑を浮かべている。
「良いのか?」
「エーリッヒの言うとおりだ。そちらに任せるよ」
「分かった」

「ギュンター、支部の監視だが卿は直接関わらないでくれ。信頼できる人間を選んでアントンに報せて欲しい」
「分かった」
「頼むよ、卿は仕事の抱え過ぎだ」
「分かったよ、卿に言われるとはな」

ギュンターが苦笑している。打ち合わせが終わると雑談になった。今度久しぶりにナイトハルトも入れて四人で飲もうという話になったが、皆忙しい。何時そんな事が出来るか……。

司令長官室を出るとギュンターに少し話をしようと宇宙艦隊司令部のサロンに誘った。席に座りコーヒーを頼む、正直あまり飲みたいとは思わなかったが何もなければ手持無沙汰だ。

「忙しいのか?」
「まあ色々と有る。フェザーンにも人を入れているが国内もな、ちょっと面倒な事が起きている」
「国内?」
俺の問いかけにギュンターが頷いた。

「汚職の摘発だ」
「汚職?」
「ああ、サイオキシン麻薬事件並みの体制で取り掛かっているよ」
唖然とした。あの事件は憲兵隊の総力を挙げた事件だったはずだ。それと同じ? そんな汚職事件が有るのか?
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