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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 カイザーリング艦隊(その2)
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に不満を持った皇帝が密かに作ったという組織が「皇帝の闇の左手」だと言われている。

 彼らは皇帝の命に従い、大貴族、軍、宮中において帝国のためにならない、あるいは皇帝の不興を買った人物たちを調査し、没落させ、あるいは密かに抹殺してきた。表で動くのではなくあくまで影で動く事から「皇帝の闇の左手」と呼ばれる様になったという。いつから存在するのかはわからない。噂によると晴眼帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世の司法尚書を勤めたミュンツアーが司法尚書になる以前、「皇帝の闇の左手」だった時期があるといわれている。その経験によって司法尚書時代に綱紀粛正を行ったと。ありえない話ではないだろう。

「どういうことだ、エーリッヒ」
「判らない。整理して見よう」
「参謀長は私が闇の左手だと思っている。だから殺そうとしたと。つまり私が皇帝に報告したら身の破滅だと思った、ということだ。いや待て、その前に私がここへ来たのは単純な人事異動じゃない! 皇帝の命令で来たと思ったんだ!」

「皇帝の命令で来た?」
「そう、皇帝の命令でここにきた、何のために?」
「……サイオキシン麻薬か!」

「そうだ。サイオキシン麻薬に気付いたのは私だ。カイザーリング提督を説得したのも私だ。一介の大尉がいきなり内部告発をしたり、貴族や将官を相手に説得したりするとは思えない。おそらく後ろ盾があると思ったんだ」
「それが、陛下だと」
「ああ、そうだ」
 
 俺は原作を知っているから生き残るために必死だった。たとえ相手が誰であろうと死ぬ事に比べればましだと思い行動した。ただそれだけだった。しかし、リヒャルト・パーペン少将はそう思わなかった。後ろ盾が有るから強気なのだと思ったのだ。だとすれば、パーペン少将が何を恐れているかだ。

「エーリッヒ。パーペン少将もバーゼル少将の仲間だと思うかい」
「……パーペン少将だけかな。サイオキシン麻薬の汚染はもっと深いのかもしれないよ。どうやらまだ何も終わっていないようだね、ギュンター」










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