第十話 エレオノールの訪問
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こで殿下、お願いがございます」
「……?」
「もし、カトレアと破談になったら……私と婚約して欲しいのです」
「んんっ!?」
マクシミリアンは思わず口のものを吹きそうになった。
「コホッ……本気ですか?」
「はい、本気です」
「たしか、ミス・エレオノールは他の方と婚約されてると聞いてますが? それはどうされるのですか?」
「それは……取り消してもらいます」
(それじゃ、先方は納得しないだろうに……)
エレオノールの稚拙な方法に内心呆れる。
「まあ、ミス・エレオノールの婚約話は置いておくとして。そもそも、何故そのような事を言い出したのです? ヴァリエール公爵は承知しているのですか?」
「いえ、お父様もお母様も知りません。まだ誰にも話していません」
「それなら……」
「もし、このカトレアとの婚約が破談になってしまったら、ラ・ヴァリエール公爵家はトリステイン中に恥をさらす事になります!」
いきなり怒鳴り声を上げたエレオノールに思わずびっくりしてしまった。
「ミス・エレオノール、落ち着いて……」
「私は、私はそれを避けたいんです!」
「……」
その後も、散々まくし立てるエレオノール、その口調も徐々に早口になる。
マクシミリアンはエレオノールに落ち着くよう説得しようとしたが、間に割り込む隙が無いままエレオノールの独演会になりかけていた。
しかし、息継ぎ無しで一気にまくし立てたため、エレオノールの独演会は終了、苦しそうに息を整える。
マクシミリアンはこの機を逃さず、話に割り込んだ。
「ミス・エレオノール」
「っく、は、はい」
「ミス・エレオノール、先ほどから聞いていれば、貴女は自分の事しか考えてないように聞こえます」
「それは……」
「ラ・ヴァリエール公爵家を救うために我が身を犠牲にする。貴族の娘として、大変、結構な事と思いますが……」
「……」
「もし、ミス・エレオノールと婚約したら、他の貴族は黙ってはいないでしょう。嫉妬に狂って『王権の私物化だ!』とか『ラ・ヴァリエール家の専横を許すな!』とか……散々騒ぎ立て返って、ラ・ヴァリエール公爵家とトリステイン王家を、ひいてはトリステイン王国全体を窮地に立たせかねません」
エレオノールは『ハッ』とした顔をして、マクシミリアンを見た。
「……ともかく。ミス・エレオノール、この話は聞かなかった事にしましょう。それに好きでもない男に嫁ぎたくないでしょう?」
エレオノールにウィンクして、この場を和ませようとした。
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