第七話 王太子の秘薬作り
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呼び鈴を鳴らすと部屋の外で待機していたセバスチャンが入ってきた。
「アンリエッタが寝てしまったから戻しておいてくれないか?」
「ウィ、殿下」
セバスチャンは一緒に待機していたアンリエッタ付の女官にアンリエッタを任せるように指示を出した。
すやすやを眠るアンリエッタを起こさない様に抱きかかえた女官はそのまま退室した。
「他に何か御用はありますか?」
「いや、今はいいよ。下がっていい」
「では、失礼します殿下」
一礼すると、セバスチャンも退室した。
一人残されたマクシミリアン。
部屋を戻すためにイーヴァルディの勇者を本棚に返し、指を鳴らした。
今度は本棚が床に引っ込んで部屋の奥に収納されていた秘薬棚が本棚があった地点に進んだ。
ちなみに秘薬瓶がひっくり返ることは無いように作られている。
本まみれの私室が一転、秘薬だらけの部屋に変わった。
先ほどアンリエッタに本を聞かせてやったソファにドッカリと座ったマクシミリアンは嘆願書の事を思い返した。
嘆願書の内容は新農法や新肥料の作成法などが書かれてあり、その対価にどこかの領主に封じてほしい・・・という旨だった。
(王太子といってもある程度自由にできる資金があるわけじゃない)
秘薬の材料も父王に頭を下げて調達したものだった。
(トライアングルスペルじゃ、ほとんどの感染症の類は完治はできないけど、予防なら可能だ。
そのための殺虫剤散布なんだけど・・・こういった目に見えない成果では理解されない可能性が高い)
事実、王宮をはじめトリステイン中に殺虫剤を撒いて回っても、害虫駆除という観点からは感謝されても感染症の予防という観点では理解されていない。
だからこそ、領主になって手腕を発揮したほうが手っ取り早く名声と権力を得ることができる。
・・・そうマクシミリアンは考えていた。
(世知辛いけど、やっぱり金と権力が必要だなぁ・・・)
内心、ため息をつく。
大貴族を相手にそれなりに立ち回るには今のマクシミリアンはあまりにも非力だ。
(どうも父さんは、オレを次期国王として鍛え上げるつもりのようだけど。
当然といえば当然か・・・こちらとしても望むところだけどね)
とは言え、不安が無いわけではない。
マクシミリアン自身、将来、トリステインをどういった国にしたいのかビジョンが見えてこないのだ。
最初、真っ先に頭に浮かんだのは、選挙ポスターに書いてあるような『綺麗事』ばかりで、実際、政策として行うにはどうにも不安だった。
(少しずつ、少しずつ未来のトリステイン像を構築していこうか)
いずれ背負う巨大な責任にマクシミリアンは思わず身を震わせた。
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