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彼に似た星空
18.謝罪と懇願
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、狂おしいほどに愛おしく感じた。

 そして彼は、それに応えてくれた。何度も頭を撫でてくれ、その手で私の涙を拭い、頬に触れ、身体を強く抱きしめてくれた。その度に彼への愛が心に溢れた。もっともっとと彼の愛を求めた。理不尽に奪われたあの日以降の時間を取り戻すように、私たちは互いに触れ、互いに愛を確かめ合った。

 もうどれだけの間こうしていただろう。数分かもしれない。数十分かもしれない。時間の感覚すら分からなくなるほど抱きしめられ、彼の愛を一身に受けた後、フと彼の手が止まった。私は彼の胸から顔を上げ、彼の顔を見た。彼は、星空を見上げていた。

「テートク……」

 彼は私を見た。笑顔だった。

「行くんデスカ? ……嫌デス。もっと愛して下サイ」

 心持ち、彼の笑顔が苦笑いになった気がした。微妙な変化だが、私には分かる。彼が今少し困っているのが、私には手に取るように分かる。

「アナタを愛してマス。だから行かないで下サイ。ワタシを置いて行かないで下サイ」

 困らせてもいい。嫌だ。もっと彼を愛したい。もっと彼に愛して欲しい。もっとずっとこうしていたい。だから行かないで下さい。私と一緒にいて下さい。

 彼は再び星空を見上げた。嫌だ。行かないで。私のそばにいて。もっと私に触れて下さい。私のことを愛して下さい。

 聞いて下さい。私はあなたを愛しています。だから行かないで下さい。もう私を離さないで下さい。私の元から離れないで下さい。

 もう、私をひとりにしないで下さい。

 彼はもう一度私を見た、いつか見た、本当に美しい微笑みだった。その微笑みのまま、彼は自分の頬と私の頬をぴったりと合わせた。

――おれは金剛を永遠に愛している
  でも続きは、金剛がおばあちゃんになってからにしよう

 涼しい夜風の感触で目が覚めた。私は広縁の椅子に座って寝ていたようだった。広縁の窓から夜風が吹き込んで、白いカーテンが優しく静かになびいていた。

「テートク……?」

 夢だったのか、それとも私はあの後自分でも知らないうちにここまで戻っていたのかは分からない。でも私は……私の心と身体は、その感覚をリアルに覚えている。比叡と榛名の懐かしい温かさを。そして、愛する男性の、狂おしいほどに待ち焦がれた愛おしい感触とぬくもりを、私の心と体は覚えていた。

 私は自分の頬に触れた、涙の跡が残っていた。私の頬はまだじんわりとしめっており、まだそこまで時間は経ってないようだった。

 広縁と居間を仕切る障子を開けた。相変わらず霧島は黒霧島のボトルを枕にして寝ていた。鈴谷は相変わらずうつぶせだったが、もうケツを突き上げてはいなかった。

「……お姉様」

 フと、霧島がしゃべった。彼女は目を覚ましていたようだ。起き抜
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