はて迷外伝 最強の剣と最強の盾
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を結んだ他国にとってもこの王室の事情は大きな支えとなっているのだ。
平時であれば嫡子誕生というだけで士気は高まったろう。だが、この時だけはそれでは足りなかった。他国の侵略によって広大な土地を得たラキアの物量に押され、連合は心身ともに疲弊しきっていた。時代は戦の象徴にして花形となった男を求めていたのだ。
――間もなくして、王妃の帝王切開が行われた。
嫡子は、男――そう、世間には発表された。
これで士気を取り戻した連合はラキアの猛攻を凌いだ。更に、オラリオ内の勢力変化を知ったラキアがオラリオに今まで以上の大戦力を送るも失敗。これにより他国を侵略するだけの余裕を失ったラキアは連合を警戒してか領土内に撤退し、停戦の申し込みを連合へと送ってきた。
アレスは今度こそ本気でオラリオを攻め落とす算段だったらしく、この敗戦は完全に予想外だったらしい。加えてさしものラキアも百年続く戦争は堪えていたらしく、国の財政が傾き始めていた頃だった。そこに来ての士気高揚による一大反抗が止めを刺したのだ。
こうして百年戦争は両陣営の思惑の一致によって終戦。長きにわたる戦乱に終止符を打つ切っ掛けとなった嫡男は『連合に救いをもたらした偉大なる子』として持て囃され、アウグストの名を授かることとなった。
この歴史の巨大なうねりの影で。
王妃と同時期に懐妊した一人の使用人が女子を出産し、静かに職を離れて赤子と共に故郷へ帰ったことを知る者は少ない。その使用人が連れ出した子の眼の色が、王室特有の翡翠色をしていた事を知る者もまた――少ない。
そして、終戦から15の年月が流れたある日のこと――ダンジョン10階層。
「つ、疲れたぁ〜〜〜〜っ!!帰る!もう帰ろう!!」
栗色の髪をカチューシャでまとめた剣士の少女は、言葉通り心底疲れ果てた声で剣を鞘に納めた。彼女の周囲には一人の男と、無数の魔物の死骸と魔石、ドロップアイテムが散乱している。その半分以上が一撃で急所を切り裂かれており、少女の剣術の腕が非凡ならざるものだということが理解できる。
安物のマントを棚引かせてはいるが、疲労困憊のその姿では格好もつかない。ただ、その翡翠色の瞳だけは彼女の強い意志をたたえるように輝いている。
そんな彼女に男は呆れたようなまなざしを送った。
「だから言っただろう。臭い袋を使って魔物をおびき寄せて一気に倒しステイタスアップなど無謀なのだと……日進月歩の成長など、やろうと思ってやれるものではない」
男はどうやら少女の仲間らしく、体躯に似合わぬ巨大な盾と、それに並ぶ巨大な片刃の大剣を背中に収めて少女へ歩み寄る。黒髪に浅黒い肌の色が、いかにも屈強そうな肉体を更に際立たせている。
「ンなこと言ってもぉ!!アイズ
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