Side Story
無限不調和なカンタータ
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
断言する。
優れた音感覚を『絶対音感』と称するならば。
この世界を作ったヤツは、その真逆。
壊滅的な音感覚、即ち『絶対音痴』であると。
「ああもう、イライラする。頭が割れそう」
どこへ行ってもまあ、ぴーひゃらぴーひゃらぴよぴよぷっぷくぷーと。
まったく、毎日毎日、騒々しいコトこの上ない。
生物達が鼓動を鳴らし、声を発し、息をし、活動するたびに重なり合う、絶望的なまでに耳障りな不協和音。
これを美しいとか旋律とか表現しちゃってるヤツは、きっと耳がねじれてよじれて美醜の区別もつけられなくなってるんだわ。
いっそ、お気の毒とお悔やみを申し上げたいくらいに。
中でも、人間が出す怪音は酷いなんてものじゃない。
規則性も何も無く、大きくなったと思ったらパタッと止まったり。
やけに静かだなと思ってたら、いきなり金属を爪で引っ掻いたような音を高々と響かせたり。
死際に立てる『ザザーッ』って音も、なんなの？
岩礁に打ち付ける波音とか……そうね。
薄くて少し柔らかい紙を揉みしだいてるような音にも聴こえる。
あれだけは、何度試してもいまだに発生源が見つからないのよね。
目に見えるものが要因じゃないのかしら？
どっちにしても、あんまり心地好くないのは確かだけど。
「どこかにもう少しまともな音はないのかしら。いい加減、気が狂いそう」
ねえ、創造神とやら。
アンタの中途半端な作曲のせいで、私の耳が大迷惑を被ってるわ。
早急になんとかしなさいよ。
私が胸を患ってぶっ倒れても、アンタは責任取らないでしょ？
放置主義の卑怯者め。
「「ああ……頭が痛い……」」
…………ん？
今の、私の呟きとぴったり重なった声は何？ 人間？
ここは、人里離れた深い森のド真ん中。
人間も悪魔も滅多に来ないし、獣がうろついてるわりには常時薄暗くて、比較的静かなほうだから居付いてるのに、また邪魔な音が入った？
「どんな顔して戻れば良いんだろ……」
高所に伸びる太い枝に預けてた体を起こして、足下を覗き見れば……
やっぱり、人間の男だ。
しかも、なよっちくてひょろひょろな体型のクセに、喉から出してる音は耳障りな低音。
「は────…………」
「……………………。」
私、人間の愚痴とため息って、殺したくなるほど嫌い。
なんなの？ あの不愉快極まる雑音は。
息を吐くのなら、私を見習って誰も居ない所でしてちょうだい。
耳に入った瞬間、どうしようもなく殺意が湧くのよ！
って、あっちは私が頭上に居るなんて知るワケないか。
でも、私を苛つかせたのは事実よ。
ムカつくから殺してやる。
「へ？ ふ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2025 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除