Side Story
無限不調和なカンタータ
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ぁい!?」
立ち上がり、空中に身を踊らせ。
枝葉を散らしながら、男の目の前に片膝で着地。
右腕で貫こうと体のバネを伸ばし、間抜けな声の獲物に視線を合わせ
「うあ、綺麗ぇえ〜」
「…………ッ!?」
自分をまっすぐ見返す、真ん丸な金色の目に驚いても。
本気の動作は急に止まれない。
勢いはそのままで、ピンと伸ばしていた指先がふにゃんと丸まり、結果。
「っい……っ、たあぁぁ────あいっ!」
「ふぎゅうぅ〜」
私の拳と体当たりを喰らった男が仰向けに倒れ。
ついでに私まで、男に乗っかる形で一緒にひっくり返ってしまった。
「な、なんなのよ!? あんた!」
上半身をガバッと起こせば。
どうやら心臓を狙った私の手は、男の腹に打撃として入ったらしい。
着古され、多分、ここに来るまでの間に汚れまくったのだろうボロ服が、拳とぶつかった部分だけ奇妙によれてる。
気が抜けたせいもあるんだろうけど、よく見ると思ってたより背が高い。
目測を誤ったのか。
「ぐげふ! かふっ、……いっつつ……」
男が苦しげに咳き込んで……あ、虹彩が涙で潤んでる。
金は金でも、ハチミツ系の澄んで滑らかな金色なのね。
いや、それはどうでもいい!
「急に変なこと言わないでよ! おかしな力の入り方したせいで、私の手が痛くなったじゃない!」
「え? あ、えーと……ごめんなさい?」
「謝るの!?」
「自分のせいで被害が出たのなら、謝るのは当然だと思うけど。何か?」
「何か? じゃない! 私は今あんたを殺そうとしたのよ!? ここは恐怖に引き攣った顔で「うわあーっ! 悪魔だー!」とか叫びながら逃げるのが、人類のセオリーってもんじゃないの!?」
少なくとも今まで殺してきた人間は全員そうだったのに。
綺麗って何!? 綺麗って!
殺される寸前で、殺そうとしてる相手に賛辞を寄越してどうすんのよ!
「はあ……。それならそれで良いかも知れない。もう、これから先どうしていいのか分からないし、君みたいな人……じゃなくて、悪魔だっけ? に、殺してもらえるなら、人生最後に潤いがあったって言うか……」
ハチミツ色の目に自嘲を浮かべて、ふいと横向いた白い顔を。
麦色の短い髪がサラリと撫でた。
こいつ……。
「やめた」
すっくと立ち上がって膝を払う私を、間抜けな顔の男が見上げる。
「死にたがりなんか殺してもつまらないもの。どうしてこの私がくだらない人間の、くだらない消失願望を叶えてやらなきゃいけないのよ。鬱陶しい。獣のエサにでもなれば? この辺り、夜になれば大型の肉食動物がたくさん現れるからちょうど良いわ。動物の血肉に吸収されれば、無駄に溜め込んだその生命
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