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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
八 〜人、それぞれの想い〜
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のお茶と比べて、如何ですか?」
「そうですな。渋味を楽しむ緑茶や、味わい深い番茶などがあり申した。これは、何と言う茶にござるか?」
「はい。烏龍茶と言います。茶葉を乾燥させた後で、発酵させた物です」
「ふむ。まるで英国利(えげれす)人が好む、紅茶と似ている」
「英国利人、ですか?」

 首を傾げる董卓。

「遥かに海を越え、やって来ていた異国の者達にござる。その他にも、仏蘭西(ふらんす)亜米利加(あめりか)阿蘭蛇(おらんだ)など……多種多様な異国の民が出入りしていました」
「そうですか、交易の盛んなお国なのですね」
「……いや。つい二十年ほど前までは、鎖国をしていたのでござる」
「何故ですか? 国境を閉ざせば、人も物も停滞してしまいます」
「……かつては南蛮人と呼ばれた、別の異国の者が我が国を盛んに訪れていた時期があり申した。伴天連なる異教を教え広める者が、みだりに人心を惑わしたのでござる。その時、政を司る将軍が、国を閉ざし国の安寧を図り申した」
「将軍? それは、私のような立場ですか?」
「いや、我が国では将軍、と名乗れるお方はただ一人だけ。徳川氏の棟梁だけが、その資格がござった」
「では、丞相のようなものでしょうか?」

 丞相、というと……私の知る曹操か。
 帝を差し置き、政務を行うという意味では……ふう、これではまるで勤王志士ではないか。
「似て非なるもの、とでも申しましょうか。我が国では実質、武士が国を支配する体制でござった。帝や朝廷は権威の象徴と位置付けられていましてな。……それも永きに渡り続きましたが、それも今では新たな政府が樹立され、帝の親政という形に変わり申した。拙者は、それを認めぬ立場として、戦っていたのでござる」
「激動の世、だったのですね。今此処も、そうですが……」

 規模こそ違えど、確かに私の今いるこの世も、また戦乱の世。
 だが、頑迷な武士や、旧きにしがみつく者どもがおらぬ。
 その意味では、我が意を通しやすい、とも言えるな。

「ところで、董卓殿。一つ、伺って宜しいか?」
「はい。何でしょうか?」
「あくまで、仮の話でござるが……。もし、貴殿がこの先、この大陸で一番の権力を持つ機会があったとしたら」
「……一番の権力、ですか?」
然様(さよう)。皇帝陛下も凌ぐ程の権力を手にする事になったとしたら、如何される?」
「私は、陛下にお仕えする身です。そんな地位は望みません」
「ふむ。ですが、地位や権力は、望まずとも手に入ってしまう場合もありますぞ」
「……私は、ただみんなと静かに暮らせれば十分です。徒に権力を求めれば、それだけ多くの民を苦しめるだけです」
「では、権力には固執なさらぬ、と?」
「はい。それは、土方さんも同じなのではありませんか?」

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