Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 26. The Cross of the Indra
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くれよ?」
「ふざけないで。貴方ごときの剣で、私が慄くとでも?」
そう言って睨み返すと、PoHはフンッ、と鼻で嗤い、何の躊躇もなく私に包丁を振りおろし、叩きつけた。視界の端でHPがグイッと削れるのが見え、思わず顔がゆがむ。
PoHは薄ら笑いを浮かべながら、私に連続して刃を叩き込み続けた。嬲るように、少しずつ、私のHPを削っていく。武器のないわたしは、せめて抵抗の意を示すために、声もあげずただひたすらに奴のフードの内側を睨み続けていた。
こんなところで死にたくはない、けど、奴に媚びるくらいなら死んだ方がマシ。
命に比べれば誇りなんて、と思うかもしれないけど、それでもコイツに命乞いだけはしたくない。私は『闘匠』。死神の片腕。これ以上の無様を晒せば、彼に合わせる顔がない。だからせめて、死ぬときは潔く死のう。僅かに怯える心にそう言い聞かせ、パニックを抑え込む。
後悔がないわけじゃない。
もっといろんな美味しいものを食べたかった。
もっといろんな景色を見てみたかった。
もっとあの家でうたた寝をしていたかった。
――もっと、一護と一緒にいたかった。
そこまで考えて、初めて気づいた。
この心をもやもやさせる感情の正体、一護を想うたびに、うずくように走る感覚の真相。
ここまで来て、ようやく分かった。死を目前にして、やっと自覚できた。生まれて初めて、最初で最後の、私の恋慕。
そう、私は、彼のことが――
「……どうしたよ? 戦場のド真ん中でボケッとしやがって。いつものテメーらしく、ねえじゃねえか」
声が、聞こえた。
私へと振り下ろされ続けた包丁の乱舞。それが止んでいて、代わりにコートを纏った大きな背中が、私の前に突如として出現していた。
「……貴様、どうやってここまで」
「あ? 訊きゃあ答えるとでも思ってんのかクソ野郎。テメエに放すことなんざ、一つもねえよ。とっとと……消えろ!!」
爆発するかのような叫びと共に、激しい金属音が鳴り響く。刀を振りきってPoHをふき飛ばした一護は素振りを一つすると、私の方へ振り返った。何かを言う前に回復結晶を取り出し、私にむけて「ヒール」とつぶやく。一瞬で私のHPが全快し、這いよっていた死の気配が遠のくのが分かった。
「……一護、その……」
「わりい、リーナ。来んのが遅くなっちまったな」
しかめっ面で、一護が静かに言う。
「ちっと待ってろ。すぐに、終わらせてくる」
そう言った瞬間、彼の姿が――消えた。
と思った次の瞬間には、一護ははるか彼方の敵集団の一人を斬り伏せた後だった。無論、誰一人として反応できた者はいない。近くにいいた私でさえ、踏み込む瞬
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