Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 26. The Cross of the Indra
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包まれている進路を見据える。あと数百メートルも進めば、もう安全地帯に辿り着く。そして、
「……この先に、奴らがいる」
「なんだよ、こえーのか?」
私の呟きが聞こえたらしく、一護は肩越しに振り返った。
「まさか。貴方こそ、いち早く武器を抜いてたけど、ひょっとして怖いの?」
「アホ。テメーらがボサッとして、ここの雑魚連中にたかられねえように先陣切ってやるために決まってんだろーが」
「レベル六のMobに、攻略組の私たちがたかられる? 冗談でも有りえない。百歩譲って有りえたとしても、そんな無様をやらかすのはそこの髭面野武士くらいでしょ」
そう言って私が人差し指を突きつけると、いきなり話題に引きずり出されたクラインは鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情を浮かべた。
「え、ちょっ、なにさらっとディスってくれてんだ、リーナ嬢ちゃん? おりゃあ仮にも攻略組で、しかもギルドリーダーなんだぜ?」
「あ、でもクライン。お前つい一週間くらい前、グラマーな女性型の超格下Mobが斬れないとか喚いてたよな。んで、結局二十体くらいに囲まれて『ぐおぉ、こ、これぞハーレム!!』とか何とか叫んでたような……」
「て、てめえキリト! なにバラしてんだよ!! メシ一回おごりでチャラにしたじゃねえか!!」
「露店の串焼き一本がメシ一回にカウントされるわけないだろ! マーテンの高級レストランでフルコース料金出す約束はどこいったんだヒィッ!?」
「いい加減にして、二人とも。叩き出すわよ?」
場所も弁えずやいやいと騒ぎ始めた二人の中間に、アスナのマジ刺突が叩き込まれた。余計なことを言うと、火種を作った私にも飛んできそうだから、ここは茶化すことなく黙って眺めてよう。多弁は銀、沈黙は金、と。
三人のくだらない漫才を見たせいか、張りつめていた空気が多少和らいだような気がした。みんな緊張がほぐれて肩の力が抜け、苦笑を浮かべる者もいる。とりあえず、結果おーらいってことにしとこう。
そんな皆を見て、私同様火種作成の片棒を担いだはずの一護は、呆れたとばかりに軽いため息を吐き、声を張り上げる。
「……ったく、なに遊んでんだよ……おいオメーら! そろそろ一分二十秒経つだろうが。さっさと先に進むぞ――ッ!?」
瞬間、一護の眼が鋭く光る。ほぼ同時に担いだ刀が振り抜かれた。
白銀の刃が目にもとまらぬ速さで閃き、ガキンッ! という硬質な音が響く。数秒後、残心を取る一護の背後に漆黒のスローイングダガーが落下。乾いた音と共に地面に突き立った。さらに遅れて、黒いフードを被った人影が三人、上空から落下してきた。
その一連の事象の意味すること。それは――、
「――敵襲! 各自散開っ!!」
「――シィッ!!」
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