15.私たちのホーム
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「鈴谷は?」
鈴谷も申し訳無さそうな顔で首を横に振った。
この段階で、言い知れぬ不安が私の胸を襲った。確かに先ほどの戦闘は激しかった。私達がその戦闘で受けた損壊も甚大なものだった。だからといって、こう都合よく全員の通信機が壊れることなどあるのだろうか? もし、この中の誰かの通信機は無傷の状態で、にもかかわらず返事がないのだとしたら…もし、私たちの通信が鎮守府に届いてないのだとしたら…そしてもし、届いていながら返事が出来ない状況にあるのだとしたら……
「みんな! 急いで戻るネ!!」
「お姉様、無理です! 霧島と青葉が大破判定でスピードはこれ以上出せません!!」
「Shit……!!」
私には自覚はなかったが、その時私はおそらくいらだちを顔に出してしまっていたのだろう。青葉と霧島が申し訳無さそうにうつむいているのが見えた。
私も出来れば二人をいたわりたかったが、それ以上に、胸に去来する言い様のない不安感を早く払拭したかった。なぜ私は、これほどまでに不安を感じるのだろう? 通信機が壊れ、鎮守府と通信ができなくなる状況など、これまでに何度も経験したはずだ。それなのに、なぜか今回だけは、考えただけで胸が押しつぶされ、叫んでしまいたくなるかのような不安感が襲い掛かってくる。私はなんとか気持ちを押し殺し、必死にスピードを上げたくなる気持ちを抑えた。
「え……ちょ……」
不意に鈴谷が立ち止まり、わなわなと震え始めた。
「? 鈴谷?」
「どうしたノ?」
私たちも、鈴谷の異変に気付いた。常に明るくていたずらっぽい笑顔を浮かべ、たとえ大破判定の状況でも『ちょっとマジ恥ずかしいし〜……』とまだ余裕を感じさせることの多い彼女が、立ち尽くし、体を震わせ、困惑と恐怖に震えた表情で私を見た。
「金剛さん……みんな……どうしよう」
「鈴谷?」
「どうしよう…鎮守府見えた……鎮守府見えたけど……」
満身創痍の私たちを迎え入れてくれるはずの鎮守府は、粉塵と煙の漂う瓦礫の山と化していた。
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