暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
30話 無音の追跡者
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わったらヒヨリを通してメールで知らせるから自由に行動してくれ」
「………今のアイテムとか、いろいろ聞きたいことはあったけど、とりあえずは情報収集を任せるわね」
「燐ちゃん、気を付けてね?」
「ああ、行ってくる。期待しておいてくれ。ニオも、楽しみにしていてくれ」
「………は、はい………!」


 手短に言葉を交わしてから店を出て、一番近くにそびえる街灯の中ほどを目掛けて跳躍。

 ………しかし、イメージと感覚の間には大きく齟齬があるらしく、狙った位置よりも高く身体が浮いてしまう。とりあえず宙でも動作の余裕はあるようで、身を翻して姿勢を補正しながら街灯の柱を靴底で蹴り飛ばし、屋根の上に膝を付くかたちで着地する。
 思った以上に平衡感覚の優秀さを要求するスキルのようだ。どうにも思ったように動いてはくれなかったが、これからの順応に期待するしかない。
 とはいえ、今は自分の不器用さを嘆くよりも、今はコルネリオのクエストを進行させなければならない。未だに内臓が浮くような浮遊感が貼り付く腹を摩りながら、今度は《無音動作》を発動させつつ、高低差の激しいロービアの屋根の上をひたすらに駆ける。

 煙突を踏み台に飛距離を稼いで路地の隙間を超え、小窓から突き出た屋根を飛び石に細い水路を抜け、破壊不能(イモータル)オブジェクトである物干し縄の上を駆け抜けて区画を超え、まさに道は舗装された街路に限らないと言わんばかりに突き進むこと三十分。ヒヨリ達のいる区画の南にあり、市場や各種商業施設がひしめく南西のエリアへと辿り着き、街を囲む外壁に接する太い水路まで到達する。

 街の最果てとも言えるような現在地は、主に商業区画に商品を供給する卸のレンガ倉庫が並ぶ影のエリアだ。忙しなく物資を運ぶ彼等は、やはり商品を大八車に直接積み込んでいる様子が散見される。本来ならば木箱を固定する為の綱も、この時ばかりは倉庫の隅で退屈そうにとぐろを巻いているようだった。だが、今は彼等の仕事ぶりに構っている暇はない。

 本命は、さも当たり前のように接岸する幾艘もの小舟たち。そこに近寄って何やら話し込む褐色の肌のごろつき数名だ。屋根のふちまで寄り、這いつくばるような姿勢で姿を誤魔化すと、視界の端には現状の《隠れ率》を示す100パーセントの数字が示される。位置取りのアシストを受けてこそではあるが、恐らく動きさえしなければ少なくともNPCには永遠に見つからないだろう。


「………おお、コイツはやっぱり当たりみたいだな」


 観察を続けていると、思わず感嘆の声が漏れる。ゴンドラの傍で会議を開いていたNPCのごろつき達は、一人を残して散らばると、なんと数名が俺が屋根に潜伏する倉庫から次々に木箱を運び出しては船に待機する男に荒っぽく投げて渡す。
 危なげなく受け取る男も次
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