13.花火
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普段は反物から浴衣を仕上げているらしいが、今日ばかりはさすがに間に合わないと判断したらしく、服屋さんは、すでに仕立てられていたものを準備してくれた。霧島が選んだものは、古式ゆかしい王道の紺の浴衣。一方の鈴谷は、ピンクの模様が入った、明るく今風ながらも古き良き和の雰囲気を壊さないものを選んでいた。
「お姉様見て下さい見て下さい!! どうですか? 似合ってますか??」
「霧島〜よく似合ってマース!」
「鈴谷はどお? どお?」
「鈴谷もそれでケツがどうとか言わなかったらとってもカワイイデース!!」
「今日はケツ痛くないから大丈夫だよ!!」
「だからそれをやめるネ……」
鈴谷は浴衣に着替えるのにあわせ、服屋さんが好意で鈴谷の髪をあげ、うなじを見せる髪型にセットしてくれた。おかげでとても浴衣がよく似合っている。
「オーケー! これでジャパニーズ花火を楽しむ準備も整ったネー!!」
「では会場に行きましょうお姉様!!」
「オー!!」
私達は一旦車で旅館に戻り、着替えた服を旅館に置いて再度花火会場に向かった。花火会場はこの近くにある高原の、小高い丘の上。私たちは丘のふもとまで車で向かい、そこからは木々に囲まれた山道を歩くことにした。
カランコロンと小気味良い音を鳴らし、霧島と鈴谷は歩く。私は普通のサンダルを履いているため、そんな風情ある音は出ない。もし提督が、私が浴衣を着た時に『似合ってる』と言ってくれていれば、私も一緒に浴衣を着てカランコロンと音を鳴らしながら歩くことが出来たのに…とちょっと不満に思った。そんなことを考えながら、暗くなってきた山道を歩いた。
山道は、道自体は舗装されているため歩きやすいが、いかんせん街灯がなく周囲が暗い。
「霧島〜…暗いネ〜……なんとかして下サーイ……」
「無理ですよお姉様」
当たり前だし分かりきったことだが、わがままをここまで一刀両断されてしまうとなんだかシャクだ。
「鈴谷ー夜偵を飛ばすネー」
「鈴谷は瑞雲専門だし、そもそも今は持ってないよー」
「万事休すネー……」
「まー慣れるしかないっしょ」
そんなくだらない駄話を続けていると、急に視界が開けた。どうやら会場の丘に着いたようだ。
「鈴谷ちゃーん!!」
「あ! おばあちゃーん!!」
鈴谷は声がした方を向き、その方向に走っていった。鈴谷に声をかけたのは、昨日鈴谷の負傷したケツにさらなる追い打ちをかけていたおばあちゃんだ。
「鈴谷ちゃんにここでも会えると思わんかったが!!」
「鈴谷はね! 会えると思ってたよ!!」
「そげなこつ思ってくれておばあちゃんうれしかね〜……ぐすっ」
「おばあちゃん泣かないの〜」
昨日の今日だというのに、鈴谷はあのおばあちゃんともう仲良く
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