13.花火
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、しかも視界いっぱいに花火がはじけてキレイだ。
「お、おねえさま?」
「この方が楽に見られるし、キレイデース! 二人もやってみるデスネ!!」
「マジで?!」
「で、ですがお姉様…私達は浴衣ですし……」
とためらう霧島をよそに鈴谷は……
「じゃあ鈴谷も寝転ぼーう! うりゃー!!」
と言いながら、勢い良く寝転んだ。
「ぉおおおおお!! マジ綺麗!! 金剛さんこれナイス!!」
「でしょー? 霧島も早く寝転ぶネ!!」
「ですが浴衣が……」
「汚れれば洗濯すりゃいいじゃん!! ほら早く寝転ぶ寝転ぶ!!」
鈴谷が上半身を持ち上げ、霧島の手を掴んで強引に引っ張った。バランスを崩した霧島はそのまま私のお腹の上に倒れてきた。
「ごぶぉッ!!」
「あ、す、すみませんお姉様!!」
「べ、別にいいデース…早く霧島も早く寝転ぶネ…」
「そうだよー。もう寝転んじゃったし!!」
「わ、わかりました…では……」
霧島は私のお腹を枕にして寝転んだ。この展開は予想外だ。
「ホワッツ? 」
「んーいや、なんとなくです」
「……まぁいいデース」
私たちがごちゃごちゃやっている間も、花火は止まることなく上がり続けていた。音は戦いの時の砲撃とそっくりだった。打ち上がる時の空気の振動も似ていた。だがその音、その響きも心地よかった。空にはたくさんの輝きがはじけ飛んでいた。そしてそれらが輝く軌跡を描きながら、私たちの元に降り注ぐように落ちてきて、その都度消えていった。
ドーン……ドーン……という花火の音と振動は、私の心臓を心地よく揺さぶった。私の胸を締め付け、私の心に溜まっていたものを追い出すかのようだった。花火の輝きは私たちを祝福してくれているようだった。周囲が昼のように明るく輝き、私達を暖かく包み込んでくれた。
「霧島……鈴谷……綺麗ネ……」
「お姉様……」
「金剛さん……」
私達は、自然と手を繋いでいた。
「テートク……今、テートクが言っていた花火を見てマス……霧島と、鈴谷と一緒に……」
私は、霧島と鈴谷の手を強く握った。霧島と鈴谷も、強く握り返してくれた。打ち上げるときの音と振動が強すぎて、私の心にひっかかったタガのようなものが外れてしまったようだった。気がついたとき、私は泣いていた。
その後も花火は続いた。私達は、何も言えずに、ずっと花火を見ていた。口を開けば、その分私達を包み込んでくれたこの花火の美しさが損なわれるような気がした。だから私達は、ただ静かに花火の美しさに身を委ねた。
――もういいんじゃないか?
ですよねぇ?
もう充分です。
花火の音に混じって、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。私はその声が誰の声であるか知っている。
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